魚をよく食べる人は長生き!?
知ったらきっと得をする、魚の栄養と人の健康の関係についてご紹介します。
本ページに掲載の内容は、調査・取材時点で確認できた範囲です。研究は日々進むため、最新の知見と異なることが掲載されている可能性もあります。
魚介類や海藻類には、ビタミンやカルシウムなどの人の健康に必要な栄養成分の他、健康増進に役立つ機能成分が豊富に含まれています。日本は世界でトップレベルの長寿国で、それを支えているものの一つが「魚食」の文化であると言っても過言ではありません。
魚の脂質に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、血栓を作りにくくしたり脳や視覚の機能向上に関与していることが以前から知られていますが、DHAやEPAなど魚介類が含む機能成分の効能についての研究は益々盛んになり、世界的に注目されています。
しかし、魚の機能性は1つの成分にだけ由来するものではなく、魚に含まれる色々な成分が複合的に作用することで、効果が発揮されていることが多くの研究で明らかにされました。
魚に豊富にある栄養素を単独で摂るだけではなく、魚そのものをはじめとした様々な食材を組み合わせてバランス良く食べることで、魚が持つ栄養素の機能性がより有効に発揮されることが期待されます。和食が高く評価されるのは、海藻や野菜等を魚と組み合わせてバランス良く摂ることができるからでもあるのです。
季節ごとに様々な魚の旬を楽しみつつ、健康にも良い効果が得られるのというのは、和食文化の素晴らしいところ。魚食をぜひ日常の食事に取り入れたいものです。但し、様々な汚染物質が存在するのも確か。同じ種類の魚ばかり食べ続けるのではなく、色々なところでとれた色々な種類の魚を食べるのがよいでしょう。
日本人一人当たりの魚を食べる量は年々減少し「魚離れ」と「食の欧米化」が進行しています。欧米型の食生活を続けると、高脂質・高コレステロールになりがちになり、さらに摂取する栄養が偏りやすくなります。その結果、がん、心臓病、動脈硬化、脳卒中といった生活習慣病に罹患する人が増えているというデータが出されました。
また、魚をたくさん食べる人ほど心筋梗塞になりにくい、魚を食べると血栓の形成抑制に大きな効果、海藻と魚を組み合わせて食べることが肥満防止につながる可能性(*6)、魚介類の摂取が男性の糖尿病予防に効果あり、といったことなどが様々な研究により指摘されています。
※生活習慣病の予防には、食べ過ぎや運動不足等生活習慣全般の見直しが欠かせません。取り入れたい生活習慣の一つとして、魚を組み合わせた栄養バランスの良い食事をおすすめします。
厚生労働省の研究班が、平成1990年から約11年間にわたって岩手県、秋田県、長野県及び沖縄県に住む男女約4万人について、食事も含む生活習慣と虚血性心疾患発症との関連を追跡調査した結果、「魚を週に8回食べる人は、週に1回しか魚を食べない人に比べて、心筋梗塞を発症するリスクが約6割低い」ということが分かりました(*1)。
研究の内容は2006年1月、米医学誌「サーキュレーション」に発表され、魚食は健康面で改めて評価されています。
心筋梗塞は、メタボリックシンドロームによって動脈硬化が進行することで発症する心臓の病気です。
動脈硬化によって心臓の血管に血栓(血液の固まり)ができて血管が詰まり、血流が止まって心臓の筋肉(心筋)の細胞が壊われてしまうという、虚血性心疾患の代表的なもの。心臓の血管が一瞬で詰まり、突然死んでしまうこともあります。
虚血性心疾患を防ぐためには、食生活・運動習慣・ストレスなどの生活習慣を見直し、メタボリックシンドロームの予防に努める必要があります。
独立行政法人水産総合研究センターの研究によると、ラットを使った実験で、魚食による血栓形成抑制作用は、魚油の血液凝固抑制作用の他に、魚タンパク質による血栓溶解作用も働いていることを突き止めました。つまり、魚油だけを摂るのではなく、「魚を食べること」が、脳梗塞や心筋梗塞など血栓が原因となる疾病の予防に有効である可能性が示されています。
脳卒中は、脳の動脈硬化が進んで脳の血管が詰まったり破れたりする病気で、日本人の死因で毎年3〜4位の上位を占めています。後遺症が残ることが多く、寝たきりなどの要介護状態となる最大の原因ともなっており、生活の質を保つ上で予防を意識した日頃からの生活習慣が重要です。
脳卒中は以下の3つに分類されます。
・脳の血管が破れる「脳出血」
・脳動脈瘤が破裂する「くも膜下出血」
・脳の血管が詰まる「脳梗塞」
脳卒中は動脈硬化が脳の血管で進行した結果として起こることが多いため、効果的な予防としては、メタボリックシンドロームを改善して動脈硬化の進行を食い止めるということがまずあげられます。
※脳の血管に奇形があるために奇形のない人より脳血管疾患のリスクが高い人もいます。
動脈硬化の予防で最も重要なのは、高血圧を防ぐこと。
高血圧の状態が長く続くと動脈硬化が進行し、やがて脳の血管が詰まり脳梗塞へとつながります。より強い高血圧の場合には脳の血管が破れて脳出血を引き起こしたり、脳の血管の一部に動脈瘤ができて破裂し、くも膜下出血を引き起こしたりもします。
高血圧の他、脂質以上症や糖尿病、心臓病も脳卒中のリスク要因。また、これらの疾病に深く関わる生活習慣としては、大量飲酒、喫煙、運動不足、肥満になるような食生活があげられ、可能な限り避けるのが望ましいと考えられます。
血圧に良い作用をもたらす栄養という点では、魚の脂肪に含まれる成分が、動脈硬化や血栓を防いで血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなど、ヒトの身体にとって良い作用いくつも持っているということが研究によってどんどん明らかになってきてきました。さらに、最近の研究では、魚介類をよく食べる人では、脳卒中を含む循環器系の病気での死亡リスクが低くなるということも明らかとなりました。ヨーロッパの動脈硬化学会誌に2014年2月に掲載された厚生労働省研究班の論文(*7)によると、日頃の食事で魚介類由来の脂肪酸(DHAやEPA)が多いほど、その後の循環器疾患(脳卒中や心臓病など)による死亡リスクが低いという研究結果が出たとのこと。例えば、サンマを一尾毎日食べ続けることで脳卒中や心臓病で死亡するリスクが2割減少するそうで、魚食がますます注目されています。
魚の持つ優れた栄養は、様々な食物と組み合わせて食べることで、より効率良く吸収・利用できるということも明らかにされています。様々な食材を使ったバランスの良い食事を、楽しくいただきましょう。
肥満は男女問わず避けたいもの。
外見を気にする人が多いですが、実は、肥満は色々な病気を引き起こしかねない、不健康な状態。健康面でのリスクが高いのです。肥満は時に「恰幅が良い」などと表現されることもありますが、必要以上に脂肪が蓄積した状態は、健康の観点からは早世リスクの高い状態です。
肥満は、皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満に分けられます。
腸のまわりに脂肪が過剰に蓄積している「内臓脂肪型肥満」、いわゆるリンゴ型の肥満は特に要注意で、内臓脂肪の蓄積を防ぐことが心臓病や脳卒中をはじめとする生活習慣病の予防につながるとされています。
肥満の予防や解消には運動と食生活の改善が欠かせません。
自分に合った適度な運動を継続する他、野菜を豊富に取り入れ魚を組み合わせた栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。
多くの魚は低カロリー&高たんぱく。
それだけでも大きなメリットですが、魚の優れたところはそれだけでなく、魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの多価不飽和脂肪酸、ヒスチジン、タウリンなどの成分には脂肪増加を抑制する作用があるとされており、魚を継続して食べることで太りにくい身体になっていくことが期待されます(*8)。
また、魚を海藻と組み合わせて食べることが肥満防止につながる、という可能性も指摘されています。
アメリカの栄養学雑誌『The Journal of Nutrition』に、海藻と魚を組み合わせて食べることがどのような効果を持つのかに着目した実験の結果が掲載されました(*10)。その結果からは、ご飯+ワカメの味噌汁+焼き魚、といった典型的な和食の組み合わせが、中性脂質濃度の上昇に伴う肥満や動脈硬化の予防に有効である可能性が示唆されたのこと。
ワカメと魚油はどちらも、血中の中性脂質濃度を低下させる作用を有します。しかし作用のメカニズムが異なるため、ワカメと魚を一緒に摂取することで、中性脂質濃度の低下作用が足し算的に強くなることが、明らかにされました(実験はラットを使って行われています)。
魚と海藻の組み合わせを、より積極的に日頃の食事に取り入れることで、太りにくい体作りを目指せるかもしれません。
欧米型の食生活、運動不足・社会的ストレスの増大、生活環境の変化などにより、日本では生活習慣病の患者数が益々増加しています。中でも糖尿病に罹患している人の数は多く、糖尿病が強く疑われている人、可能性が否定できないいわゆる「隠れ糖尿病」は、合わせて2,000万人以上いるとされています(2015年1月時点)。
糖尿病が疑われる人の約4割はほとんど治療を受けたことがありません。糖尿病ははじめのうちは痛みなどの自覚症状がないため、検査で血糖値が高かったり、治療が必要と言われたりしても治療を受けない人や治療を途中で中断してしまう人が多くいると言われています。
しかし、糖尿病を放置するとやがて合併症が出ます。
糖尿病は、主に膵臓でインスリンを分泌するβ細胞が破壊されて起こる1型糖尿病と、インスリンの効き目が悪くなったり、インスリン分泌が低下したりすることによって起こる2型糖尿病に分けられます。日本では、主に生活習慣が原因となる2型が圧倒的に多いのが特徴で、生活習慣を改善することで、多くの人は糖尿病に罹患せずに済むとも言えます。
糖尿病を予防するには、
・適度な運動
・栄養バランスの良い食事を、規則正しく、時間をかけて
・良質で適度な時間の睡眠
・ストレスをためない
といった基本的なことがとても大切。
糖尿病が気になる人は、日々の生活を振り返って、少しずつ良い習慣を取り入れてみましょう。
魚の栄養と糖尿病の関係については世界で研究が行われており、魚に含まれるn-3系不飽和脂肪酸がインスリン抵抗性を改善するため、魚の脂質を摂ることで2型糖尿病の発症リスクを低下させられるという結果も出ています(*2)。 まだ研究途上の段階ではあるようですが、魚を含めたバランスの良い食事は、糖尿病の点でもメリットがあると言えそうです。
肝臓は大人で800〜1,200gと、人間の体内では最も大きなサイズの臓器。
食事で取り込んだ栄養を身体に必要な成分に変換したり、身体にとって有害な物質を無害にする解毒の働きをしたりと、人体にとってとても重要な役割を果たしています。
肝臓には痛覚が無いこともあり、肝臓に問題が生じていても持ち主はなかなか異変を察知できません。そのため、肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれています。自覚症状が出る頃には症状が相当進行している、ということが肝臓の病気の場合にはよくあります。
国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループが、男女約9万人を11年間追跡調査し、魚とn-3不飽和脂肪酸摂取量と肝がん発生との関連を調べた結果が、2012年に論文として専門誌に掲載されました(*3)。
研究対象に該当した男女約9万人のうち、11年の追跡期間中に肝がんと診断されたのは、398人。
グループ分けして調べた結果、n-3不飽和脂肪酸を多く含む魚、および、EPA、DPA、DHAといった、魚に多く含まれているn-3不飽和脂肪酸を多くとっているグループほど、肝がんの発生リスクが低いことが分かったと結論付けています。
肝臓がんは、2013年には日本国内のがんによる死因の第5位を占めているがんで(男女計。男性に限ると第4位)(*4)、肝臓自体に発症した「原発性肝がん」と、他の臓器から転移した「転移性肝がん」の2種類に大別されます。
日本では、原発性肝がんのうち肝細胞がんが90%と大部分を占め、その主要な発生要因として肝炎ウイルスの持続感染が指摘(*5)されていますが、上記調査では、肝炎ウイルス陽性者でもn-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの肝がんリスクは低いという結果となったそうです。
n-3不飽和脂肪酸には抗炎症作用があることが知られています。同調査では、そのためにn-3不飽和脂肪酸が慢性肝炎への抗炎症作用を通して肝がんの発症を抑えているのかもしれないこと、また、n-3不飽和脂肪酸の持つインスリン抵抗性改善作用についても触れて、肥満や糖尿病との関連についても示唆しています。
筋肉があった方が太りにくく、筋量を増やすことが生活習慣病の予防にもつながることは、もはや常識となりました。
自分の筋力低下を実感するのは、一般的に50歳代くらいとされています。しかし実際には、30歳くらいをピークにして(女性のピークはもっと早くに訪れます)、筋肉は徐々に減っているのです。加齢とともに筋力は低下し、疲れやすくなるので体を動かさなくなり、そうなるとさらに筋力が低下するという負のスパイラルに陥りがちに。
では筋肉が減るとどのような弊害があるでしょうか。
筋肉が減ると基礎代謝量が減り、太りやすい体になります。筋肉量の低下は、糖尿病や高血圧、動脈硬化、心臓病や脳卒中など、生活習慣病の引き金となるのです。
また、生活の質(QOL/Quality of Life)を低下させる疾患として近年注目されている、
・サルコペニア(筋肉量が減り筋力も低下する状態)
・ロコモティブシンドローム(運動器の障害により、要介護となる危険性の高い状態)
といった状態を引き起こしかねません。
しかし、食事の改善や運動の積み重ねによって、ある程度は予防することができます
また、筋肉量の増加に効果があると言われている白身魚を積極的に摂るのもおすすめです。
カゼイン(乳たんぱく質)との比較で、特に白身魚のたんぱく質には、筋肉量を増やす効果があり、また、筋肉への糖の取り込みを促して、血糖の上昇を抑えたり、体脂肪の蓄積を抑えることで、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)対策につながる効果が期待される、という研究結果もあります。
もちろん、肉や卵なども良質なたんぱく源です。しかしその摂取量を増やすと動物性脂質の取りすぎにつながり、メタボリックシンドロームを招く恐れがあります。魚介類、特に白身魚の魚肉は、良質なたんぱく質であり、かつメタボリックシンドロームを予防する効果が期待できるという、とても優秀な食材なのです。
参考文献
Takafumi Mizushige 他「Fish protein intake induces fast-muscle hypertrophy and reduces liver lipids and serum glucose levels in rats」(『Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry』Vol.79 2015年)
Takafumi Mizushige 他「Fast-twitch muscle hypertrophy partly induces lipid accumulation inhibition with Alaska pollack protein intake in rats」(『Biomedical Research』Vol. 31(2010) No. 6、347-352, 2010年
魚介類には、ビタミンやミネラル等、人の健康に必要な栄養成分が豊富に含まれています。
魚介類に含まれるビタミンとして特に代表的な成分とその効果についてご紹介します。
脂溶性ビタミンの1つ。化学名は「レチノール」。
食物に含まれるビタミンAは、体の中でそのままビタミンAとして作用するものと、体の中でビタミンAに作り替えられて作用する「プロビタミンA」があります。プロビタミンAとしてよく知られているβーカロテンはビタミンAとしての働きがとても強く、体内でビタミンAとなる物質と、β-カロテンのまま働いて、活性酸素の発生を防いだり、無毒化したり、がんや心臓病、動脈硬化の予防に効能を示す物質とがあります。
皮膚や目の健康に欠かせない栄養素ですが、過剰に摂取すると却って体に悪い影響を及ぼすことがあります。通常の食生活であれば心配はありませんが、サプリメントで大量に摂る時には注意が必要です。
特に積極的に摂取するとよい方
暗くなると見えにくい、暗くなったときにが慣れにくい、風邪をひきやすい、肌がかさつく、授乳期の女性、がん・動脈硬化・心臓病の予防をしたい方など。
※夜盲症:薄暗くなったときに物が見えにくくなる状態。
※悪心:嘔吐に先行するむかつき、吐き気。
水溶性ビタミンの1つ。化学名は「コバラミン」。
葉酸とともにヘモグロビンの合成、つまり赤血球を作り出すのに深く関わる栄養素です。
また、神経細胞内のたんぱく質や核酸(遺伝子の主な成分)の合成を助けたり、修復したりします。
ビタミンB12が不足すると血を作る機能が低下するため、赤血球が減ってしまったり、異常に大きな赤血球が作られてしまったりして貧血の原因となり、下半身にしびれを起こしたりもします。
さらに進行すると、運動失調などの神経障害が起こります。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントを摂取する場合などは注意が必要です。
特に積極的に摂取するとよい方
多くの食材に含まれているため欠乏症となることはあまりありませんが、胃を切除した人や胃の粘膜に障害がある人は欠乏症に注意する必要があります。また、動物性の食物のみに存在するため、ベジタリアンの人も要注意です。
脂溶性ビタミンの1つ。化学名は「カルシフェロール」。
成長促進、特に骨や歯にカルシウムの沈着を促すビタミンです。小腸でカルシウムの吸収を促進させたり、腎臓での再吸収を促す働きがあります。
体内でビタミンDが足りなくなると、骨の石灰化が不十分となり、子供であればくる病、大人であれば骨軟化症を引き起こすことがあります。
骨や筋肉の維持に欠かせない栄養素ですが、過剰に摂取すると血中のカルシウム量が増加し、心臓や腎臓などにカルシウムが沈着して腎機能障害や石灰化障害などが起こります。通常の食生活であれば心配はありませんが、サプリメントで大量に摂る時には注意が必要です。
特に積極的に摂取するとよい方
あまり日光に当たらない方、紫外線をカットする化粧品・日焼け止めを常に使っている方、皮膚でのビタミンD産生能力が低下している高齢の方、など。
※くる病:生後1〜3か月の子供に多く見られる病気で、関節の腫れ・痛み・変形、成長の遅れなどが起こります。また、骨や歯がもろくなって、骨折しやすくなったり、歯が変色したりもします。
脂溶性ビタミンの1つ。化学名は「トコフェロール」。
魚介類全般的に多く含まれています。強い抗酸化作用があり、体の中では細胞膜の構成成分となっている不飽和脂肪酸の酸化を防いだり、動脈硬化を引き起こすLDLコレステロールの酸化を防いだりしています。
血行を良くする働きもあり、頭痛・不眠・手足の冷え・肌の老化防止などに役立つ成分です。
ビタミンAやビタミンCと一緒に摂取すると、相乗効果が期待できます。また、脂質と一緒に摂ることで吸収率を上げられます。
不足すると、細胞膜の機能が低下して老化の原因となります。また、貧血が起こることもあります。
特に積極的に摂取するとよい方
生理不順の方、更年期障害や生活習慣病が気になる方
※酸化的溶血:ビタミンEの不足により、血液中のビタミンE濃度が低下し、細胞膜の脂質が酸化して、未熟児や乳幼児などは赤血球膜の抵抗性が弱まり、溶血性貧血を起こすこと。
魚介類には、ビタミンやミネラル等、人の健康に必要な栄養成分が豊富に含まれています。
魚介類に含まれるミネラルとして特に代表的な成分とその効果についてご紹介します。
ビタミンDと同時に摂ると、吸収率アップ!
カルシウムは人の体内のミネラルとしては最も多く、大人で体重1〜2%を占めています。
日本人のカルシウム摂取量は不足状態にあり、骨粗鬆症などの欠乏症が問題となっています。また、慢性的にカルシウム不足が続くと、肩こりや腰痛、イライラなどの神経過敏状態になることがあるので、骨ごと食べられる魚や、乳製品・小松菜・水菜などを積極的に食べましょう。
厚生労働省が定めるカルシウムの1日当たりの摂取量上限は、2,300mgです。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントを摂取する場合などは注意が必要です。
特に積極的に摂取するとよい方
成長途上のお子様、閉経後の女性、骨粗鬆症が心配な方
血合いの多い赤身の魚には、鉄分が多く含まれています。特に血合いの部分には「ヘム鉄」と呼ばれる、吸収されやすい鉄分が含まれているので、鉄分不足かも?と思ったときにおすすめ。
鉄分は吸収されにくいミネラルなので、吸収を助ける働きをするビタミンCの多い食材と組み合わせたり、血行促進につながるビタミンEと組み合わせるなどの工夫をすると、摂取効率を高めることができます。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントを摂取する場合などは注意が必要です。
積極的に摂取するとよい方
成長期のお子様、月経のある女性、妊産婦
ビタミンCと同時に摂ると、亜鉛の吸収率アップ!
亜鉛は、新陳代謝、たんぱく質や遺伝情報に関与するDNAやRNAの合成、インスリンの合成、免疫反応に関わる酵素の構成成分となります。
亜鉛は体内で様々な点で働くため、不足すると様々な症状が出ます。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントを摂取する場合などは注意が必要です。
積極的に摂取するとよい方
小児、妊婦、高齢の方
魚介類はセレンを多く含むと言われています。
ビタミンCやビタミンEと同時に摂取するのがおすすめ。
大人でも体内には10mgほどしか存在していませんが、体内で生成された過酸化物質を分解する酵素の重要な成分として、老化防止やがんを抑制する働きが注目されています。
普通の食生活であれば過剰症となることは考えにくいですが、偏った食事を続けたり、サプリメントを摂取する場合などは注意が必要です。
魚介類には、人の健康に必要な機能成分が豊富に含まれています。
魚介類に含まれる機能成分として特に代表的な成分とその効果についてご紹介します。
1989年、イギリスの脳科学者マイケル・クロフォード博士、日本人の子供の知能指数が高い理由の一つは、魚をたくさん食べていることだと発表しました。この発表によってDHAへの注目度が高まり、様々な臨床試験が行われ、その驚きの効果が明らかになりました。今では、血圧や中性脂肪・コレステロールの低下効果だけでなく、アトピーやアレルギー、がん(癌)や情緒安定への効果も認められてきています。
年をとったときに最もなりたくないと思われている病気の一つ、認知症。最近はアルツハイマー型認知症が増加しており、全認知症患者の8割近くを占めています。この病気の予防には、知的活動や運動も大切ですが、食生活も重要な要因。魚を1日に1回以上食べる人と比べると、全く魚を食べない人は5倍の確率でアルツハイマー性認知症を発症するという調査結果が出ました。
調理が大変だったら、刺身や缶詰を活用するなどの楽をしてでも、魚を食べるのはおすすめなんです。
特に積極的に摂取するとよい方
妊娠中の女性、成長途上のお子様、認知症が心配な人、生活習慣病が気になる人
イヌイットに冠状動脈疾患(心臓病)が少ないことから、1960年代にグリーンランドの村でイヌイットの食事と血栓性疾患や血液の成分との関係を調査が行われ、これがきっかけとなってEPAが注目されるようになりました。
EPAには赤血球の膜を柔軟にする性質があり、毛細血管のような狭いところへも血液がスムーズに流れるようにします。さらに、EPAには血管を柔らかくしなやかにする作用もあって、血管年齢を若く保つ効果があることも分かってきました。
加齢に伴い血管が老化すると、動脈硬化や血栓の形成などで心臓病や脳梗塞などのリスクが高まりますが、EPAを摂取することでこれらの病気のリスクを低減させることができると考えられています。
またEPAは、運動する人にとってもプラスの効果があると期待されています。 EPAをトレーニング中に摂取すると、血液サラサラ効果で細胞への酸素供給能力が高まり、持久力の向上につながるとのこと。また、運動時に踵が着地する際の赤血球破壊が減り、スポーツ貧血の予防となる効果が期待されています。
厚生労働省では1日1g以上の摂取を推奨しています。
いっぺんにたくさん摂取するのではなく、1日1gを目標にコツコツ摂取するのがおすすめです。
特に積極的に摂取するとよい方
生活習慣病が気になる人、動脈硬化や血栓が気になる人
「リ●ビタンD」等のドリンク剤に含まれることでもよく知られるタウリン。
動物性の食品を中心に広く分布していて、特に一部の魚介類に多く含まれています。野菜などの植物性食品にはほとんど含まれていません。
ヒトは、ある程度はタウリンを合成することができますが、食品から摂ることも重要です。
タウリンを食べることによる健康増進や病気の予防については、様々な事項がこれまでに挙げられていますが、一部を除いては十分な科学的データはないものともされており、全てを鵜呑みにはしない方がよいでしょう。
タウリンは、摂りすぎたとしても健康への害はないとされていますが、一度にたくさん摂っても体内で利用される量は限られているので、摂れば摂っただけ効果があるというものではありません。
一日三食、それなりにバランスの良い食生活であれば、タウリンが不足することはないとされています。しかし、不規則で偏った食生活が長期間続いてタウリンが不足する状態になると、タウリン不足による高血圧や、肝臓・心臓の機能低下などが起こる可能性もあるので、魚介類も含めたバランスの良い食生活を心がけましょう。
特に積極的に摂取するとよい方
新生児、血圧が気になる方、心臓や筋肉の衰えが気になる方
参考資料
「アスタキサンチン」は、鮭、いくら、えび、かになどの赤い色をした魚介類が豊富に含む色素成分です。
藻類が作り出すアスタキサンチンをおきあみ等が食べ、そのおきあみを鮭やえび等が食べてアスタキサンチンを蓄えて身や殻を赤くしていきます。
カロテノイドの中では、β-カロテンよりも強い抗酸化力があり、またβ-カロテンよりも栄養の届きにくい細部に入り込めるため、眼精疲労の改善や、美肌・美白、筋肉疲労を軽減する効果が期待されている他、ガンをはじめいろいろな病気に対する予防効果があると報告されるなどして、注目されている成分です。
特に積極的に摂取するとよい方
老化が気になる方、生活習慣病が気になる方
参考資料
抗疲労成分としての効果が科学的に証明されている、イミダゾールジペプチド。複数の抗酸化物質の抗疲労効果を人で実験したところ、コエンザイムQ10やリンゴポリフェノール等他の抗酸化物質をおさえて顕著に抗疲労効果が示されたという抜群の抗疲労力で注目されています。
渡り鳥や、カジキやカツオ、マグロ等、長時間に渡って運動を続ける生物の骨格筋中に多く含まれており、鶏のむね肉100g中におよそ200mg、めかじき100g中におよそ2000mgのイミダゾールジペプチドが含まれているといわれています。
ただし、鶏むね肉やかじきを食べたらすぐに疲れがとれるというものではなく、実験ではイミダゾールジペプチド200mg程度を目安に毎日摂取して2週間程度経った頃から効果があらわれたとのこと。また、イミダゾールジペプチドは調理時に肉汁と一緒に流出してしまうので、煮込み料理などで煮汁こと食べると、無駄にすることなく効率良く摂取できます。
特に積極的に摂取するとよい方
疲れがたまっている方、運動する方、生活習慣病が気になる方
アンセリン
「アンセリン」とはイミダゾールペプチドの一種で、2つのアミノ酸、β-アラニンとメチルヒスチジンが結合してできています。脊椎動物の筋肉や脳に存在し、特に回遊魚や鳥など、持久力や瞬発力を必要とする動物の筋肉に多く存在することが知られています。
海の生き物の中では、カジキ、カツオ、マグロ、サケ、トビウオ、サメなどに多く含まれています。特に回遊魚の身には多く含まれていて、回遊魚が泳ぎ続けられるのは、アンセリンにより持久力が維持されているからではないかと考えられています。
陸上の生物の中では鳥類に多く含まれており、身近な食材としては鶏ムネ肉が挙げられます。
アンセリンには、
・疲労回復
・運動能力、持久力向上
・痛風の予防、改善
といった効果が期待されており、生活習慣病の予防・改善やアスリートの運動機能向上の観点からも研究が進められています。
また抗酸化作用もあるため、体を若々しく保つアンチエイジング効果も期待されます。
参考資料
健康増進、健康長寿のためにも、魚や魚の加工食品をぜひ積極的に食べていただきたいのですが、状況によって気をつけなければならない場合があります。
日本では以前から高血圧と脳血管疾患が多く見られ、伝統的な食生活における食塩の過剰摂取が大きく影響していると考えられています。
2012年時点での日本の成人1日あたりの食塩平均摂取量は、男性で11.3グラム、女性で9.6グラム。
世界保健機関(WHO)は2013年、世界中の人の食塩摂取目標を1日5グラムに設定しました。
米国の心血管疾患予防のガイドラインでは、塩分の最大摂取量は1日3.8~6.0グラム(2014年10月時点)。
日本人の塩分摂取がいかに多量であるかが分かります。
米国では、食事中の食塩の75%以上がファストフードを含む外食と加工食品に由来しています。日本人における塩分摂取の状況も米国とそう大きくは異ならないであろうと考えられ、新鮮でバランスのよい素材を選びなるべく塩分を使わずに自分で調理することが、減塩への早道です。しかし、加工食品を全く摂らないのも現実的ではありません。加工食品の含む塩分を知った上で、それらを上手に利用すると良いでしょう。
調理方法で工夫しつつ、カリウムを多く含む食材(野菜や海藻、イモ類、リンゴ・バナナ等の果物)適量を食事に取り入れるのがおすすめです。
【ナトリウム排出作用のあるカリウムについて】
・eヘルスネット(厚生労働省)「カリウム」
・みんなの食育(農林水産省)「塩分の摂り過ぎに注意」
下表に、魚の主な加工食品中の食塩含有量をまとめました。
※文部科学省「5訂食品成分表」「日本食品標準成分表2010」より作成
※加工の方法やメーカーによって塩分量は異なります。
※食塩摂取の調整の際参考となるよう、若干ですが魚以外の食品も掲載しました。
加工食品 | 量 | 塩分量(約) |
---|---|---|
塩鮭 | 1切(80g) | 4.6g |
たらこ | 一腹(50g) | 2.3g |
焼きちくわ | 1本(100g) | 2.4g |
いか塩辛 | 大さじ一杯(20g) | 2g |
はんぺん | 1枚(100g) | 1.5g |
しらす(半乾燥) | 大さじ山盛り一杯(10g ) | 0.6g |
魚肉ソーセージ | 1本(65g) | 1.4g |
ロースハム | 厚め1枚(100g) | 2.5g |
ショルダーベーコン | 厚め1枚(100g) | 2.4g |
3大栄養素の1つ、私たちの身体に不可欠な「脂質(脂肪)」。
魚の脂質は頭に良い、身体に良い、等のことを耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
このページでも、「心筋梗塞」や「脳卒中」など生活習慣病のところに記したように、魚の脂質は生活習慣病等私たちの健康と深く関わっています。
では魚の脂質は、牛や豚などの脂質とどのように違うのでしょうか。
脂質の働きや各脂肪酸の役割・特徴についてまとめました。
脂質は細胞膜や核酸、神経組織などの構成成分として不可欠な成分であり、また、1g当たり9kcalという高いエネルギーを生み出すため、身体活動のエネルギー源として大切な栄養素です。
一方で、身体に悪影響を及ぼす動物性等の脂質の摂り過ぎによる肥満や脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病およびその予備軍は増加しているため、摂取する脂質の種類・質を考える必要があると言われています。
脂質は以下の4つに分けられます。
脂肪酸は、炭素・水素・酸素によって構成されており、それらの結合のし方によって、
の2つに分類されます。
飽和脂肪酸は、豚や牛などの動物性脂肪や、やし油などに多く含まれます。 生理作用としては、中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させる働きがあります。LDLコレステロールは、動脈硬化を促進させ心臓病や脳卒中などの原因となるので、「悪玉」と呼ばれます。
一方、魚に含まれる脂質は、不飽和脂肪酸の中でも「多価不飽和脂肪酸」と呼ばれるもので、よく知られている「DHA」や「EPA」は多価不飽和脂肪酸の「n-3系脂肪酸」に分類されます。 生理作用としては、中性脂肪を低下させ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増加させる働きがあります。HDLコレステロールは、血管内にこぼれ落ちているLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を回収し、動脈硬化を抑制します。
種類 | 代表的な脂肪酸 | 生理作用 | 多く含まれる食品 | ||
---|---|---|---|---|---|
飽和脂肪酸 | パルチミン酸 | ・中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを増加 | やし油、バター、豚や牛の脂身など | ||
不飽和脂肪酸 | 単価脂肪酸 | オレイン酸 | ・HDL(善玉)コレステロールを下げずに総コレステロールを低下 | サフラワー油、オリーブ油、菜種油(キャノーラ油)など | |
多価脂肪酸 | n-6系脂肪酸 | リノール酸 | ・LDL(悪玉)コレステロールを低下 ・過剰摂取によりHDL(善玉)コレステロールを低下 |
ひまわり油、綿実油、大豆油、コーン油、ごま油、くるみなど | |
γ-リノレン酸 | |||||
アラキドン酸 | |||||
n-3系脂肪酸 | α-リノレン酸 | ・中性脂肪を低下させ、HDL(善玉)コレステロールを増加 | しそ油、えごま油など | ||
DHA (ドコサヘキサエン酸) |
魚(まぐろ、いわし、さば、さんま、あじ、ぶり、うなぎなど) | ||||
EPA (エイコサペンタエン酸) |
食材には旬があります。
魚も同様で、季節毎に旬を迎える魚があり、やはりそれぞれの季節に旬を迎える食材と組み合わせたり、その季節に相応しい方法で調理したりして、よりおいしくいただくことができます(養殖の場合は人為的に食べ時を調整します)。また縦に長い日本では地域によっても旬の時期が異なり、その土地で旬を迎えた魚介類をその土地の調理法でいただくのは、旅の大きな楽しみでもあります。
では、旬の魚を食べる利点は何でしょうか。
食べどきを迎えた旬の魚は、そうでないときと比べて香りやうまみが豊富なので、味が濃く感じられます。調味料を最低限にして素材そのものを味わうのに最も適していると言えるでしょう。
さらに旬の時期の魚はそうでない時期と比べると、栄養価も高くなっています。例えば秋に旬を迎えるサンマ。9〜10月頃になると脂質たっぷりのサンマが店頭に並びます。この脂質には身体に嬉しいDHAやEPAがたっぷり含まれていて、しかもとびきりおいしいですよね。牛や豚の脂は食べ過ぎ注意ですが、旬の魚は積極的にいただきたいものです。
たくさん獲れる「漁獲どき」を旬と言うこともあり、この時期の魚はよりお手頃な価格で、新鮮なものをたくさん手に入れやすくなります。食べどきとは時期が異なることもあります。
現在は、多くの食材が季節に関係なく一年中出回っていて旬を忘れがちですが、旬の魚を食卓に取り入れて季節を感じませんか?
※旬の時期は地域によってずれることがあります。例えばカツオやトビウオは地域によって大きく異なります。下記の表ではそのような場合、関東地方における旬を示しています。
※魚は50音順です。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アイナメ | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |||||
アカカレイ(赤鰈) | 1 | 2 | 11 | 12 | ||||||||
アジ(鯵) | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | ||||
アナゴ(穴子) | 5 | 6 | 7 | 8 | ||||||||
アマダイ(甘鯛) | 1 | 2 | 3 | 10 | 11 | 12 | ||||||
アユ(鮎) | 6 | 7 | 8 | 12 | ||||||||
アンコウ(鮟鱇) | 1 | 2 | 3 | 10 | 11 | 12 | ||||||
イワシ(鰯) | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |||||||
エイ(鱝・鱏・海鷂魚) | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |||||||
カサゴ(笠子) | 1 | 2 | 3 | 4 | 11 | 12 | ||||||
カジカ(鰍) | 9 | 10 | 11 | 12 | ||||||||
カジキ(梶木) | 1 | 2 | 10 | 11 | 12 | |||||||
カツオ(鰹) | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |||||||
カマス(梭魚) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 9 | 10 | 11 | 12 | |||
カレイ(鰈) | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |||
カワハギ(皮剝) | 1 | 2 | 10 | 11 | 12 | |||||||
カンパチ(間八) | 6 | 7 | 8 | 9 | ||||||||
キス(鱚) | 5 | 6 | 7 | 8 | ||||||||
キンキ(金魚) | 1 | 2 | 10 | 11 | 12 | |||||||
キンメダイ(金目鯛) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 11 | 12 | ||||
グチ(愚痴) | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |||||||
コイ(鯉) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
サクラエビ(桜海老) | 11 | 12 | ||||||||||
サケ(鮭) | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |||||||
サバ(鯖) | 9 | 10 | 11 | 12 | ||||||||
サメ(鮫) | 1 | 2 | 10 | 11 | 12 | |||||||
サヨリ(針魚) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 11 | 12 | |||||
サワラ(鰆) | 1 | 2 | 3 | 4 | 10 | 11 | 12 | |||||
サンマ(秋刀魚) | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |||||||
シシャモ(柳葉魚) | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |||||||
シタビラメ(舌平目) | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |||||||
シマアジ | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | ||||||
スズキ(鱸) | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |||||||
タイ(鯛) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 10 | 11 | 12 | ||||
タチウオ(太刀魚) | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | |||||||
タラ(鱈) | 1 | 2 | 10 | 11 | 12 | |||||||
トビウオ(飛魚) | 3 | 4 | 5 | |||||||||
トラフグ(虎河豚) | 11 | 12 | ||||||||||
ナマズ(鯰) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
ニシン(鰊) | 1 | 2 | 3 | 10 | 11 | 12 | ||||||
ノドグロ(喉黒) | 1 | 2 | 3 | 9 | 10 | 11 | 12 | |||||
ハゼ(沙魚) | 9 | 10 | 11 | 12 | ||||||||
ハタ(羽太) | 1 | 2 | 3 | 11 | 12 | |||||||
ハタハタ(鰰) | 1 | 2 | 3 | 10 | 11 | 12 | ||||||
ハモ(鱧) | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |||||||
ヒラメ(鮃) | 1 | 2 | 9 | 10 | 11 | 12 | ||||||
フグ(河豚) | 1 | 2 | 12 | |||||||||
ブリ(鰤) | 1 | 2 | 3 | 10 | 11 | 12 | ||||||
ホッケ(𩸽) | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | ||||||
ボラ(鯔) | 1 | 10 | 11 | 12 | ||||||||
マダイ(真鯛) | 11 | 12 | ||||||||||
ムツ(鯥) | 1 | 2 | 3 | 4 | 10 | 11 | 12 | |||||
メジナ(眼仁奈) | 1 | 2 | 3 | 4 | 11 | 12 | ||||||
ワカサギ(公魚) | 1 | 2 | 3 | 11 | 12 |
※旬の時期は地域によってずれることがあります。
※主に当社で取り扱っているカジキ以外の種類を中心に、日本で多く食されている人気の魚たちを紹介します。
ギンダラ
カサゴ目ギンダラ科ギンダラ属
Anoplopoma fimbria (Pallas, 1814)
青森県〜北海道の太平洋沿岸、オホーツク海沿岸、岩手県〜相模湾にも少ないが生息
全長100cmくらい。水深300m〜600mの深海に生息する。全身黒褐色でタラに似ているが、下あごにヒゲがなく、背ビレが2基しかないことで区別が可能。タラよりもアイナメやホッケに近い仲間。昔はマダラの代用品として使われていたが、脂が多いことから敬遠され、安い魚だったが、近年日本人の脂を好む嗜好の変化により、価格が高騰している。
旬は秋から冬。ほとんどが冷凍ドレス(頭を落として内蔵を抜いた状態)やフィーレ(三枚おろし)で輸入される。冷凍物を選ぶ時は、変色していないもの、ドリップが出ていないものを選ぶようにするとよい。近年はチルドでも輸入されるようになり、刺身でも食べられるようになってきた。
脂質、タンパク質、ピタミンA(レチノール)、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、葉酸、ナイアシン、パントテン酸)、ビタミンD、ビタミンE、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、鉄、銅、亜鉛などを含む。いわゆる脂が乗った魚で、脂肪分が豊富。脂肪構成を見ると、オリーブオイルと同じ一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が主体。オレイン酸にはLDH(悪玉)コレステロールを下げる作用があり、動脈硬化や高血圧、心疾患の予防に効果に期待が持てる。DHAやEPIなどの多価不飽和脂肪酸の含有量は少なめだが、脂質の多さの割には、コレステロールが少ないのが特徴。
透明感のある柔らかなクセのない白身。熱を加えても硬く締らない。豊潤な脂から「白身のトロ」と言われる。
最もポピュラーな食べ方が煮つけ。冷凍のギンダラは湯通しし、冷水で表面のぬめりを落とした後、酒・砂糖・醤油で煮つける。他にも塩焼き、西京焼などにしても美味。塩焼きはできれば、国産の冷凍ものでないものを使うとよい。チルドのもの、国産の生のものは刺身として食べてもよい。口の中でとろける美味しさはまさに「白身のトロ」。
ホタテガイ
カキ目イタヤガイ科ホタテガイ属
Patinopecten yessoensis (Jay.1857)
東北以北、オホーツク海
殻長20cmぐらい。寿命は10年ほどで満1年で殻長3cm、2年で7.5cm、3年で9〜12cm、4年で12〜15cmまで成長。水深10m〜30mの砂底地に生息する。
殻の表面は20本ほどの放射状助に覆われている。右殻はふくらみが強く、左殻はふくらみが弱い。2枚貝は通常、閉殻筋(貝柱)は前後に2つあるが、ホタテ貝は中央に大きな閉殻筋(貝柱)が一つある。ヒモと呼ばれる外套膜が貝殻の左右に一つずつある。外套膜に黒い小さな斑紋があるが、これはホタテ貝の目でここで明るさを識別する。
天然ものの水揚げ量は年々減少しているが、1970年代に養殖法が確立された。昔は高価であったが、養殖の確立によって多く流通するようになり、価格は低くなった。稚貝を育成してから放流し、3〜4年で漁獲したものは天然ものとされる。稚貝もかなりの量が流通し、ベビーホタテと呼ばれる。
活きたホタテの貝柱とヒモはは刺身にするととても美味しい。貝柱は肉厚でトロリとした食感。ヒモはコリコリした食感が楽しめる。
活けものは刺身で美味。その他、焼いても茹でても、煮ても美味しい。
黒緑色のウロ(中腸腺)はカドミニウムなどの重金属が含まれるので、食べない。貝柱を刺身にする場合は、殻を剥き、内蔵、生殖巣ひもなどを取り除く。貝柱の表面の薄い皮をはぐ。塩水で洗い、水分をふく拭き取り、適度な大きさに切る。
ひもの刺身はボウルなどでかき混ぜて、ぬめりが出てきたら数回洗う。塩でもみ、水洗いして盛りつける。
貝柱に塩、コショウをしてバターで炒めるバター焼も手軽。活けものの場合、あまり炒めすぎないことが美味しく仕上げるコツ。
殻のまま網の上で焼く貝焼きは一番シンプルだけど、たまらなく美味。仕上げに酒と醤油で味付けをする。
干し貝柱は水でもどして、もどした水は出汁として利用。中華料理には欠かせない食材。
マダイ
スズキ目タイ科マダイ属
Pagrus major (Temminck and Schlegel, 1844)
北海道全沿岸〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、東シナ海大陸棚域
日本人に古くから愛されてきた魚。姿も薄紅色で優美、味わいもよく、「めでたい」と語呂もよいことから、縁起の良い魚として尊ばれてきた。全長40cm~100cmくらい。水深30m〜200mの岩礁域、砂礫底、砂底に生息する。体色は褐色を帯びた光沢のある薄紅色。体に青色に光る小斑点がある。マダイは肉食性で、小魚や甲殻類、頭足類、貝類などの小動物を捕食する。顎と歯が頑丈なので、貝や甲殻類などもその顎と歯でバリバリと食べる。産卵期は3月~6月頃。産卵を控えたマダイは「桜鯛」と呼ばれ、特に体色が美しくなり、味も良いため高値で取引される。春に産卵のために瀬戸内海に入ってくる明石のタイは一級品の高級食材。産卵を終えた夏から味は落ち、「麦わらダイ」、「落ちダイ」と呼ばれる。晩秋から冬にかけても味が良くなる。
タンパク質を多く含む。クレアチンも豊富。クレアチンはエネルギー代謝を活発にし、筋肉の持久力や疲労回復に効果的。脂質は少ない。
マダイは淡泊な味ながら風味豊かで、とても上品な味わい。30cm~40cmのものが美味しいとされ、「目の下一尺」と言われる。
生で食べるなら、刺身や寿司。塩焼きや潮汁、鯛めしなど食べ方もさまざま。うろこを油で揚げるとお酒のつまみにぴったり。卵巣の真子は炊き合わせ、精巣の白子は酢の物や鍋にすると美味しい。切り身やアラを蕪と一緒に炊いた「鯛かぶら」、タイの刺身を醤油やごまだれに漬け込み、ご飯の上に乗せ、だしをかけて食べる鯛茶漬も美味。丸ごとのマダイを煮つけにして、そのままそうめんとともに盛りつけて、煮汁を薄めてかけた「鯛そうめん」は瀬戸内海地方の名物。他にもポワレやムニエル、カルパッチョなど欧風料理にも合う。体色が鮮やかな紅色で、青色の斑紋がはっきりしているものを選ぶとよい。
カツオ
スズキ目サバ科
Katsuwonus pelamis
世界中の熱帯・温帯海域に分布。日本では太平洋側に多く分布する
日本では古くから食用とされ、大和朝廷に干物を献納していた記録も残る。成魚は全長1mほどになるが、漁獲されるのは40cmぐらいのものが多い。マグロは常に泳いでいないといけないことで知られるが、カツオも同じく常に泳いでいないと死んでしまう。日本近海では黒潮に沿って春に北上し、秋に南下して回遊する。夏の訪れを告げるその年初めて水揚げされるものを『初鰹』と呼ぶ。初鰹の時期は漁獲量が多い高知県を基準に考えられ、4月~6月頃とされる。9月~10月の秋に南下するものは『戻り鰹』と呼ばれる。鰹節の原料でもあり、日本の出汁文化、和食文化を支える重要な食材。
タンパク質を多く含む。中性脂肪減少に効果があるとされるDHA、EPAも豊富。赤身には女性が不足しがちな鉄分も含まれる。その他、ナイアシンも多い。
『初鰹』は脂が乗っていないので、さっぱりとした味わい。『戻り鰹』は海水温が低いので、脂が乗っている。
火を通すと身がパサパサになってしまうので、生に近い状態で食べる事が多い。刺身は美味しいが、鯖と同じく傷みが早いので、注意が必要。刺身でたべるなら、脂の乗った戻り鰹が美味。よく食べられるのが、カツオのタタキ。節状に切ったカツオの皮の部分を藁などの火で炙った後、氷でしめたもの。ネギやニンニクなどの薬味とともにいただく。醤油、酒、みりんなどで下味をつけ、片栗粉をまぶして揚げる竜田揚げも鶏肉のような食感で美味。カツオを冊にしてそのまま塩茹でにしたものを「カツオのなまり」と言う。そのままたべたり、煮物にしたりしてたべる。鰹節はカツオを茹でた後、燻して乾燥させたもの。焙乾しただけのものを荒節、これに黴を生やして熟成させ、雑味を分解し、旨味を増したものを枯節と呼ぶ。4回以上黴付けをしたものは本枯節と呼ばれる高級品。いずれも薄く削って料理に利用する。
カンパチ
スズキ目アジ科ブリ属
Greater amberjack
世界中の熱帯・温帯海域に分布。北海道の太平洋側~九州南岸、日本海側では青森県~九州沿岸部
成魚は全長1m前後だが、190cmもの大きさのものが捕獲された記録がある。アジ科の中ではヒラマサに次ぐ大型種。20〜30度が成長に適した水温のため、日本近海では春〜夏には日本列島沿岸を北上し、冬から春にかけては南下する。カンパチは出世魚で東京では成魚をカンパチ、幼魚をショゴと呼ぶ。カンパチの旬は大型のものは秋から冬、小型のものは秋になる。カンパチとブリは似ているが、カンパチの目の上には黒い帯状の線がある。また、カンパチを正面から見た時にこの線が「八」に見えることがカンパチの名前の由来にもなっている。まとまって取れないこともあり、大きさに関わらず高級魚。
脳を活性化させ、記憶力の向上に役立つとされる他、中性脂肪減少に効果があるとされるDHA、EPAが豊富。カルシウムやリンの吸収を助け、骨の形成する働きがあるビタミンDも豊富。アルコールの分解を助け、二日酔いの元となるアセトアルデヒドの分解を助けるナイアシンも沢山含むので、お酒のおつまみに最適。
ブリやヒラマサと比べると身質も硬くコリコリとした歯ごたえで、脂も少なくあっさりとした味わい。生臭さが少ないのも特徴。ブリと比べて血合いが少なく食べやすい。
味もよく、魚臭さも少ないカンパチは新鮮なものは、刺身で食べるのが一番。また、生で食べるカルパッチョにも最適。時間が経ち、熟成が進むほどに身が柔らかくなってくるので、刺身で食べるときは新鮮なものは薄切りに、時間が経ったものは厚切りにするとよい。また、刺身で残ったものは唐揚げにすると美味しい。唐揚げはそのままでもいいが、南蛮漬けなどにしても美味しくいただける。切り身はブリのように照り焼きにすると美味しく、カマの部分は塩焼きが美味。あらはブリ大根のように甘辛く煮付けてもよい。
シイラ(マヒマヒ)
スズキ目シイラ科
Coryphaena hippurus Linnaeus
熱帯・温帯海域に分布。日本では暖流の影響が強い海域
世界中の暖かい海域に生息する大型の回遊魚。大きいもので体長2m、体重40kgにもなる。体色は銀色で金色の斑点があり、全体的に青や緑のグラデーションがかっている。水揚げされる時に様々な色に見えることから虹の魚とも呼ばれる。雄は成長するにつれ、額がどんどん隆起し、特徴的な姿になる。
多くの国で食用となっているが、日本の関東地方ではあまり食べられていない。一方では四国・九州地方の一部では大衆魚として扱われているところもあり、特に高知県ではご当地メニューなども開発されている。古くからの慣習により、シイラを忌み嫌う地域もあれば縁起物として扱われる地域もあるという特徴を持つ。また鮮度が落ちやすいため、水揚げ後すぐに活き締めにして血を抜いたり塩をふって締める必要がある。旬は秋から冬。
日本では評価の分かれるシイラも、ハワイでは高級魚「マヒマヒ」として知られる。ハワイの他にもアメリカや地中海のマルタ島でも食用として人気がある。一見、白身魚と思われがちだが、シイラは青魚で赤身魚。淡白な味わいなので、白身魚と同じように食べることができる。
シイラはビタミンB12、ビタミンB1、ビタミンD、ビオチン、ナイアシン、葉酸、パントテン酸などを含む。ビタミンB12は貧血を予防し、神経機能を正常に保つのに効果があるとされている。
クセがなく淡白な味わい。厚みがあり、食べごたえがある。熱を通しても身が硬く締まり過ぎることがない。
サケ
サケ目サケ科
Oncorhynchus keta
北太平洋、北極海の一部
日本では10月から12月に産卵のために河川に遡上する。産卵した卵は2か月ほどで孵化し、海水耐性が発達した3、4月頃に海に下る。北の海で1年〜6年を過ごす。海洋生活で成熟した個体は、母川に回帰して産卵をする。産卵期の成魚の体長は80cm前後まで大きくなる。産卵・放精後は大半の親魚が数日以内に力尽きて死んでしまう。
川へ回帰する途中、北海道沿岸などで獲れるものを「秋鮭」と呼び、これが一般的なサケである。「時不知」(トキシラズ)はロシアのアムール川から回遊の途中に北海道の沿岸にやってきて春から初夏に漁獲されたもの。産卵前のサケは栄養が卵巣や精巣に行ってしまっているが、「時不知」は産卵のために来ているのではないので、脂の乗りもよく、ジューシーで芳醇な味わい。「鮭児」(ケイジ)は、11月上旬、中旬に知床〜網走付近で漁獲される若いサケ。普通のサケ1万匹に対して1 - 2匹程度しかなく、幻のサケと呼ばれる高級魚。こちらも大変脂が乗っている。
サケは身がピンクのため、赤身魚と間違われるが、実は白身魚。色素成分のアスタキサンチンが含まれているため、赤く見える。
色素成分のアスタキサンチンはビタミンCよりも約6,000倍もの強力な抗酸化作用があるとされる。DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)の脂肪酸も含み、サケの皮はコラーゲンも豊富。
糖や脂質の代謝をうながしてくれるビタミンB1、ビタミンB2、肌の健康に役立つビタミンAも含まれる。
ほどよく脂が乗ったクセのない味わい。
キンメダイ
キンメダイ目キンメダイ属
Beryx splendens
世界各地の深海
体が真鯛のように赤く、目が金色をしていることから、キンメダイと呼ばれるが、真鯛などとは全く異なる種。(真鯛はスズキ目タイ科)体長は大きいものだと50cmを超えるものもいる。大きいものは長く生きている証拠で15年ほど生きるものもいる。
幼魚は100m~250m、成魚は200m~800mの岩礁域に生息する。体高は前半身が高く、後半身が細くなっている。キンメダイ属にはキンメダイ、フウセンキンメ、ナンヨウキンメの3種がいる。
体が大きなものほど、体の赤みが濃く、小さなものは赤みが少ない。瞳の奥にタペータムという反射層があるため、目が金色に見える。店頭で見るキンメダイは鮮やかな赤い色をしているが、この色は死後に変色したもので、水中で生きている時はピンク色をしている。
日本では主に関東東方沖から沖縄までの太平洋沿岸で漁獲される。中でも下田港はキンメダイ水揚げ量日本一となっていて、下田のキンメダイは名物の一つとなっている。
キンメダイにはリンが豊富で、鮭の2倍ほどの含有量となっている。リンはカルシウムと結合して骨格を形成したり、たんぱく質や脂質と結合して細胞膜や核酸の成分となる。また、筋肉の収縮を正常に保つ役割を持つマグネシウムも豊富に含む。また、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールを減らすとされるEPA、脳の発達、老化防止に役立つと言われているDHAも含む。
肉質は柔らかで脂がのっている
ヤリイカ
ツツイカ目ヤリイカ科ヤリイカ属
Heterololigo bleekeri (Keferstein, 1866)
北海道南部以南、九州沖から黄海、東シナ海沿岸・近海域
沖縄を除く日本近海に生息。スルメイカと同じくツツイカ類なので体は細長い円錐形である。産卵は春から初夏にかけてのみ。孵化して夏から秋に小ヤリイカが漁獲され、高級品として扱われる。その後冬になると成長し、ヤリイカとして流通する。夏のケンサキイカ、冬のヤリイカと言われるように、冬の風物詩となっている。寿命は1年。雄の方が大きくなる。小ヤリから春の大ヤリまで味がそれぞれ異なる。春の雌のヤリイカは産卵期を間近に控えているので卵がびっしり詰まり、市場でも高値となる。ヤリイカは鮮度が良いものは透明で、時間の経過とともに茶色に変色する。さらに時間が経つと今度は白くなる。
ヤリイカは良質のタンパク質を多く含む。また、タウリンも豊富。タウリンはコレステロール低下作用、肝機能向上、視力向上などに良いとされる。他にも新陳代謝やエネルギー代謝、免疫反応などの働きをサポートする亜鉛、貧血に効果がある銅も含まれる。
身の甘みは控えめで上品な味わい。冬場の高級イカとして知られる。熱を通しても硬く締まり過ぎない。
新鮮なものは刺身にして食べると美味。熱を通しても身が硬くなりすぎないので、煮つけや焼き物、炒め物などにしても美味しく、幅広い料理に使える。
ムツ
スズキ目ムツ科ムツ属
Scombrops boops (Houttuyn, 1782)
北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、日本海・東シナ海、九州〜パラオ海嶺、鳥島
成魚は全長60cmほどで釣鐘形をし、側扁する。目がとても大きく、頭部の大部分を占める。背鰭は前後に2つあり、成魚の体色は背は紫かがった黒色、腹は銀色をしている。正式にムツ科に属する魚は全世界でも1属4種しかおらず、ノドグロと呼ばれるアカムツはスズキ目ホタルジャコ科でムツとは別種になる。日本近海に生息しているのはムツとクロムツの2種のみとなる。
産卵期は3月から5月。秋には体長20cmほどに成長する。2年を過ぎると水深100m付近に生息するようになり、3年を過ぎるとさらに深海へと移動する。成魚は水深200m〜500mほどの深海に生息し、小魚やイカ、エビなどを捕食する。
ムツとは四国地方の方言で「脂っこい」、「味が濃い」という意味の「ムツコイ」に由来するとされている。
旬は晩春から冬と長い。味が落ちるのは産卵後の冬から春のみ。卵巣は「むつ子」と呼ばれ、珍重されている。
ムツはタンパク質と脂肪が豊富。また、動脈硬化を抑制すると言われるビタミンAや細胞を若々しくするビタミンDも含まれる。
脂がよく乗った白身。特に冬場は脂が非常によく乗っている。火を通しても身が硬くなりすぎずふんわりとした食感が楽しめる。
煮付け、刺身、揚げ物、汁物など。ムツは内臓も皮も美味しくたべられて、捨てるところがない魚と言われている。
アブラボウズ
カサゴ目ギンダラ科タアブラボウズ属
Erilepis zonifer
熊野灘から北の太平洋、ベーリング海、中部カリフォルニア
カサゴ目の中では最大級に大きな魚で全長は大きなもので180cm、体重は90kgに達するものもいる。ギンダラ科に属する他の種はギンダラのみ。同じ種だが、アブラボウズはギンダラよりも体が丸くて太く、体色もギンダラは黒味がかったシルバーだが、アブラボウズは黒い体色にグレーの模様であることから簡単に区別ができる。成魚は北太平洋の水深200m~600mの岩礁域に群れるように生息する深海魚。肉食性で軟体動物や小型魚類、ヒトデなどを捕食している。身の40%は脂肪分で、非常に脂が乗っている。脂質を分解することが苦手な体質の人はお腹をこわすこともあるようなので、食べ過ぎには注意が必要。脂がよく乗っているため、高級魚「クエ」に偽装されたこともある。小田原や静岡では「おしつけ」と呼ばれ、古くから食べられていた。
脂肪が多いので脂質が多く、ビタミンAの一種、レチノールも多く含まれます。レチノールはエイジング効果が期待できる栄養素で、美肌をつくり、動脈硬化を予防する働きもあるとされています。他にもビタミンBやビタミンD、ビタミンEなどのビタミン類も含まれ、カリウムやマグネシウムも含まれる。
クセがない白身が柔らかな食感。見た目は身に脂が混在しているので白濁している。
他の白身魚と同じ様に煮付け、焼き物、揚げ物、刺身で食べることができる。焼いても身が締まらないのが特徴。
スルメイカ
ツツイカ目アカイカ科スルメイカ属
Todarodes pacificus
日本列島沿岸を中心とした北太平洋海域
ヤリイカと同じくツツイカ類なので体は細長い円錐形。約30cmほどまで成長する。体長は雌の方が大きく、雄が小さい。本来スルメイカは日本列島周辺の海域の固有種。日本のイカ漁獲量の大半がスルメイカで、世界的に見ても、スルメイカの最大消費国、最大輸出国が日本となっている。イカの中でも価格が最も安く、日本人にとって一番馴染みが深いのがスルメイカ。春から夏に生まれるイカ、秋に生まれるイカ、冬に生まれるイカの3つのタイプに分かれる。孵化してから成長し、産卵するまでが1年。スルメイカは産卵すると死んでしまうので、寿命は1年となる。内臓などを取り除き、天日で干したものをスルメと言い、日本では古来から朝廷への貢物として献上されてきた。ただ、スルメはスルメイカだけでなく、ヤリイカなどを天日干ししたものもスルメと呼ばれる。また、塩辛に使えるワタはスルメイカのみとなる。鮮度のよいスルメイカで手作りする塩辛は絶品。
良質のタンパク質を多く含み低カロリー。また、コレステロール低下作用、肝機能向上、視力向上などに良いとされるタウリンも豊富。肝にはビタミンAが豊富。ビタミンAは眼精疲労や視力低下を軽減し、肌荒れや風邪の予防効果があるとされる。
生で食べると程よい弾力と硬さ。熱を通すと身が硬く締まる。
生、煮物、焼き物、フライと多種多様な食べ方ができる。
サワラ
スズキ目サバ科サワラ属
Scomberomorus niphonius
北海道南部〜九州南岸の沿岸域、瀬戸内海、東シナ海大陸棚域などに分布
成魚になると最大で全長120cm、体重12kgほどにもなる。サワラは成長とともに呼び名が変わる出世魚。40〜50cmはサゴシ(サゴチ) 、50〜60cmはナギ、60cm以上はサワラと呼ぶ。大きいものほど値段が高くなり、大型のものは高級魚。サワラとは細長く「狭い腹」だから「狭腹(サワラ)」と呼ばれるようになったという説もある。
春から秋にかけては沿岸の海域の表層を群れで遊泳し、冬になると水深が深いところに移動する。昔は西日本に多いイメージがあったが、近年は北上傾向にあり、東北などでも水揚げ量が増加している。サワラは漢字で「鰆」なので、春が旬というイメージもあるが、味が良いのは秋と冬。春になると産卵のために、沿岸に来るので「春を告げる魚」という意味で「鰆」と書くようになった。
生のサワラ100g中にDHA(ドコサヘキサエン酸)が約1100mg、EPA(エイコサペンタエン酸)は約340mgと多く含まれる。DHAとEPAは青魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸で、血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させ、血液の循環をよくするとされている。これは動脈硬化や心臓病の予防につながる。また、DHAには記憶力を維持する働きがあると期待されている。他にもサワラにはたんぱく質やビタミンDも豊富に含まれる。
鮮度のいいものは透明感のある白身。鮮度が落ちてくるとすぐに白濁する。味わいは淡白ながら、やさしい甘みも感じられる。食感はとても柔らか。
コウイカ
コウイカ目コウイカ科コウイカ属
Sepia (Platysepia) esculenta Hoyle,1885
日本では富山湾・外房以南
イカは貝類と同じグループで貝殻を持つが、コウイカは舟形の貝殻(甲)を持つことが名前の由来となっている。また、墨を多く持つことから関東では「墨イカ」、甲の先に針状の棘が出ていることに因んで関西では「針イカ」とも呼ばれる。
普段は外洋の水深60m~150mあたりを回遊しているが、早春から初夏にかけて産卵のために内湾の浅瀬にやってくる。産卵後は雄も雌も死んでしまう。寿命は1年ほど。孵化したイカは翌年春には成熟し、産卵して死ぬ。
旬は産卵前の冬から春先。味がよく、高値で取引される。また、産まれて間もない5cmくらいのものも「新イカ」として珍重される。
コウイカを選ぶ時のポイントは目がきれいな黒色をしているものを選ぶこと。その他、全体に透明感があり、表皮の縞模様がはっきりとしているものを選ぶとよい。
身には良質なタンパク質が豊富。また、タウリンも多く含む。タウリンにはコレステロール低下作用、肝機能強化作用があるだけでなく、視力向上にもよいとされる。 さらにイカスミには防腐効果があり、抗がん作用も期待できる。
冬から初夏にかけての成熟したコウイカは肉厚で甘味が強い。熱を通してもあまり硬くならないので煮物などにも適している。
コウイカはアオリイカと並ぶ高級イカ。寿司ネタでも人気。刺身もよいが、焼いても煮ても美味。
カラスガレイ
カレイ目カレイ科カラスガレイ属
Reinhardtius hippoglossoides(Walbaum,1792)
北部大西洋、北部太平洋
カレイの仲間でも大型になる種。北大西洋、北太平洋の北半球一帯に分布していて、水深200m~1600mに生息する深海魚。中には水深2200mで生息するものもあるという。日本近海では、北海道全沿岸、東北地方太平洋沿岸、相模湾、三重県志摩湾などに生息する。
カラスガレイの名前は体の表面、裏面が全体的に黒く烏のような色をしていることに由来する。普段は他のカレイと同じく、有眼側を上にして海底付近で過ごしている。捕食時には他の魚と同じように体を立てて、活発に泳ぎ回り、タラなどの魚やイカ、エビなどの甲殻類も餌として捕食する。
寿命は20年以上と考えられ、5年で全長30cm、10年で60cm、15年で90cmほどに成長する。
脂が多く、価格も安価なので総菜魚として人気の魚。有眼側、無眼側ともに身は厚い。
寿司ネタとして人気のエンガワはアブラガレイと共にカラスガレイのものが多く利用されている。アブラガレイと姿が似ているが、カラスガレイの上眼は頭の真上にあるが、アブラガレイの上眼は右側に寄っているので、見分けられる。
国内で漁獲されるものの旬は春から夏にかけて。子持ちがよければ9月~10月の秋。
タンパク質を多く含む。また、コレステロール低下作用、動脈硬化の予防、肝機能強化作用が期待できるタウリンも多く含む。
身は柔らかで脂がたっぷり。主に冷凍切り身でスーパーなどで並ぶ。
アコウダイ
カサゴ目フサカサゴ科またはメバル科メバル属
Sebastes matsubarae
日本の太平洋側では青森県から高知県沖、日本海側では新潟県から山口県沖に分布
体色は鮮やかな赤色をしていて体長は50cm前後。アコウダイは別名、アコ、アコウ、メヌケとも呼ばれる。メヌケとは深い海に生息しているため、釣り上げると水圧の変化によって体内のガスが膨張し、眼球が浮き出ることから「目抜け」と称される。太平洋側、日本海側の広い範囲に生息するが特に相模湾や駿河湾に多くみられる。
昔は庶民的な食材でアコウの煮つけは普段の食事に気軽に食べられているものだったが、近年では漁獲量が激減。今では高級魚、もしくは超高級魚となっている。
水深500m~700mの岩礁域に生息。12月から4月にかけての繁殖期には水深200mほどの場所まで上がってくる。雌の体内で10万~30万個の卵を孵化させる。(卵胎生)
旬は秋から春にかけて。カサゴの仲間だが、姿はタイに似ていて色も赤く美しいので祝儀用の魚としても用いられる。
タンパク質やビタミンE、ナイアシンなどを多く含む。皮膚や粘膜の健康を維持してくれるビタミンAも豊富。また目の部分はエネルギー代謝に役立つビタミンB1も含まれる。その他EPAやDHAも多く含まれる。
皮は厚みがあり、熱すると皮の下にゼラチン質の層ができる。身は熱を入れても硬くなり過ぎない。白身は柔らかくコクのある味わい。
ブラックタイガー
十脚目クルマエビ科ウシエビ属
Penaeus monodon
東京湾以南の太平洋側。台湾、中国南部、東南アジア、オーストラリア、アフリカなど
クルマエビ科の中でも最も大きくなる種で成体は30cmほどになるものもいる。ウシエビ(牛海老)とも呼ばれ、大きくなることから牛に例えられたという。体全体がグレーでぼんやりとした黒い縞模様がある。
クルマエビに似ているが、クルマエビは体色が青灰色か淡褐色、ブラックタイガーは黒い縞模様がぼんやりしているのに対し、はっきりとした黒い縞模様があることで区別ができる。
浅い海の砂泥底に生息するが、個体数が少なく、天然もののブラックタイガーが店頭に並ぶことはまずない。店頭に並ぶのは養殖もので各地で盛んに養殖がなされている。輸入もたくさんされており、主な輸入元はインドネシア、インド、ベトナムとなっている。近年ではブラックタイガーよりも養殖しやすいバナメイエビの養殖量が増え、輸入量も押され気味である。
ブラックタイガーは生の状態だと黒っぽいが、熱を加えるとピンク色に変色する。国内では国産クルマエビよりは安い価格で流通するが、旨みが強いため、他種よりも高級。和・洋・中、様々な料理に利用される。
エビ類は高たんぱく、低脂質、低糖質が特徴だが、ブラックタイガーもたんぱく質が多く含まれ、脂質は少ない。ダイエットをしている人、体に筋肉をつけたい人には嬉しい食材。また、抗酸化作用を持つビタミンE、骨を丈夫にするカルシウムも豊富に含まれる。
身は締まりがよく、甘みが強い。熱を加えた方が身の旨みと歯ごたえが増す。
マンダイ(アカマンボウ)
アカマンボウ目アカマンボウ科
Lampris guttatus
世界中の暖海域、日本では北海道~九州の太平洋沿岸、津軽半島~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、琉球列島、東シナ海
成長すると全長2m、体重300kgにまでなる大型魚。これは大型のクロマグロと同様の大きさ。左右から押しつぶされたような側扁形で体は大きな円盤のような形。体色は赤みがかった銀色で、体全体に白い水玉模様がみられる。
マンダイは鯛の仲間ではないが、その名前の由来として、高級魚である鯛のように味がよいことから高値で引き取ってもらいたいという商人の願いが込められているという一説がある。また、生態やその姿がマンボウにとてもよく似ているため和名もアカマンボウとなっているが、分類上は別の魚である。
世界中の温帯・熱帯の海域に生息する深海魚で、水深約500mほどで生息している。その上マグロと同じく常に泳ぎ続け、睡眠時も泳いでいられるという特殊な機能をもつ。これはマンダイが魚類で唯一、哺乳類や鳥類と同じように血液を温めることが可能なため、冷たい深海の中でも体温を水温よりも5度程度高く保つことができるからである。こうした体の秘密により、深海でも活発に動けるのだ。
マンダイは生態や栄養についてもまだ研究段階。食材としての認知度もまだまだ低い魚だが、味もよく、安価なのでこれから注目が増す可能性を秘めている。
白身だが赤みを帯びていて、腹の方は脂がのり、甘味がある。背の部分は筋が多いがさっぱりとした味わい。熱を通しても硬く締まりすぎない。
カマス
スズキ目サバ亜目カマス科
Sphyaenidae
太平洋・インド洋・大西洋の熱帯、亜熱帯域に広く分布
カマスはカマス科カマス属の魚の総称として呼ばれる魚。約20種ほどいるが、市場に出回っているのは「アカカマス」と「ヤマトカマス」の2種になる。細長い円筒形で全長20~30cmのものから2mほどにも成長する「オニカマス」まで大きさもさまざま。カマスはとても攻撃的な性格で、オニカマスは人も襲うこともあり、危険とされている。
「アカカマス」は体が少し赤みがあり、全長は50cmほど。最も味がよく「本カマス」とも呼ばれる。一方「ヤマトカマス」は体に少し青みがあり、全長35cmほど。身が水っぽいため「ミズカマス」とも呼ばれる。「アカカマス」よりも味は劣るが、干物にすると美味。旬は脂がのる秋から初冬にかけてと夏の産卵に向けて栄養を蓄える春。冬場は捕食が減り、身も痩せてしまう。
脂肪分が少なく、タンパク質が豊富。また、100g中EPA(エイコサペンタエン酸)は340mg、DHA(ドコサヘキサエン酸)は940mg含まれている。EPA、DHAには血中のコレステロールを低下させる働きがあるとされ、DHAには脳細胞を若く保つ働きがあるとされている。
白身で非常にたんぱくな味。柔らかく水っぽい。
サバ
スズキ目サバ科サバ属
Scomber
日本列島近海、朝鮮半島全沿岸、中国東シナ海・台湾海峡、台湾、フィリピン諸島、ハワイ諸島、カリフォルニア沿岸
サバ属に分類されるものは、マサバ、ゴマサバ、大西洋サバ(ノルウェーサバ)がある。日本の太平洋沿岸を回遊するサバは、春から初夏に伊豆半島沖で産卵し、その後餌を食べながら北上。9月から10月頃、産卵のために南下を始めるが、その時期のサバは脂も乗り、身も引き締まり大変美味しいとされる。なかでも八戸沖で水揚げされる「戻りのサバ」は評価が高い。
マサバの腹部は銀色、ゴマサバは腹部にも黒い斑点がある。市場などではマサバを「平サバ」、「本サバ」と呼ぶこともある。マサバも昔は大衆魚だったが、近年では資源の低迷などにより高級魚化していて、各地でブランドサバが誕生している。主なブランドサバには宮城県金華山沖の「金華サバ」、愛媛県佐田岬の「岬サバ」、大分県佐賀関の「関サバ」、五島海域から対馬海峡で獲れた寒サバの「旬サバ」などがある。
一方ゴマサバは一年を通して身質に変化がない。ゴマサバのブランドサバとして高知県土佐清水市の「清水サバ」や鹿児島県屋久島の「首折れサバ」などがある。
サバは脂質が豊富で、DHAやEPAを含む多価不飽和脂肪酸を多く含む。これらは動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、悪玉コレステロールや中性脂肪を減少させるなど、生活習慣病が身体を守る働きがあるとされているので、現代人は積極的に摂りたい食材の一つ。他にも悪性貧血の予防や肩こり解消にも効果があるとされるビタミンB12も多く含まれる。さらに骨を丈夫にし、免疫機能を調節するビタミンDも含む。
表面の皮は薄いので、刺身などでもそのまま食べられる。熱を通しても身は硬く締まらない。
浅羽ガレイ
カレイ目カレイ科シュムシュガレイ属
Lepidopsetta mochigarei Snyder, 1911
福井県付近から北の日本海沿岸、宮城県付近から北の北西太平洋沿岸、北海道沿岸
水深50m~100mの砂泥地に生息する底生魚。産卵期に内湾の浅瀬に集まることから「アサバガレイ」と呼ばれる。目がある側の体色は、茶色、目がない側は白色。ヒラメとカレイはよく見た目が似ているが「左ヒラメに右カレイ」と言われるように、目を上にして並べると、ヒラメは頭が左に来て、カレイは頭が右にくる。すなわち、カレイの両目は体表面の右側についていることになる。(マヌガレイだけは例外的に両目が左にある)
カレイは約100種類もあり、日本でとれるものだけでも30種以上ととても種類が多い魚。その中でも浅羽ガレイはスーパーなどでも最も流通するカレイの一つ。体長は大きいもので40cmになるが、成長は遅く、1年で6cm、3年で18cm、5年で25cmとゆっくりと成長する。
冬から春にかけて北海道などから大量に捕獲され、安価ながら美味。スーパーなどでは近縁種のシュムシュガレイが「アメリカ産アサバガレイ」として売られていることもある。旬は産卵前の秋から冬。産卵期前の卵が詰まった状態が美味しい。
カレイは一般的に高たんぱく低脂肪でビタミンB1、ビタミンB2、タウリンを多く含む。ビタミンB1は疲労回復に、ビタミンB2は動脈効果やがん予防によいとされる。また、タウリンはコレステロール低下作用、肝機能向上、視力向上などの効果が期待される。低脂肪なのでダイエット時に向くほか、離乳食、病中・病後食としても重宝する。
クセや臭みの無い白身で、味に深みもあまりないので一般的に煮付けやから揚げに向いている。また、刺し身で食べられるものは少ない。
ブリ
スズキ目アジ科ブリ属
Seriola quinqueradiata
日本各地の沿岸、南は東シナ海、北はカムチャッカ半島、東はハワイまで北大西洋に分布
冬を代表する魚、ブリ。日本沿岸に生息する回遊魚で成長によって呼び名が変わる代表的な出世魚。関東は成長とともにワカシ(35cm以下)→イナダ(35-60cm)→ワラサ(60-80cm)→ブリ(80cm以上)と呼ばれ、関西ではツバスまたはヤズ(40cm以下)→ハマチ(40-60cm)→メジロ(60-80cm)→ブリ(80cm以上)と呼び名が変わる。関東でも関西でも80cm以上のものがブリとされる。また、大きさに関係なく天然ものをブリ、養殖ものをハマチと呼ぶこともある。季節によって生息するエリアを変え、春~夏にかけては沿岸域を北上、初冬~春には南下する。
旬は脂が乗る冬。これは産卵期前で体に脂肪を蓄えているため。冬のブリは「寒ブリ」とも呼ばれ、独特の風味があり味がとてもよい。富山県から関西地方では、年末年始にブリを食べる風習があり、これを年取り魚と呼ぶ。
天然ものの主な産地は、長崎県、北海道、石川県、島根県、鳥取県、千葉県。
養殖ものの主な産地は、鹿児島県、愛媛県、大分県、長崎県、香川県、熊本県。
養殖ものは年間を通して味が安定。天然ものの寒ブリは高級品となるが味がとても良い。
良質なタンパク質を多く含む。脂が多く、DHAやEPAを含む多価不飽和脂肪酸を多く含み、脳の活性化、悪玉コレステロールや中性脂肪の減少、血栓を防ぐ働きなどが期待できる。ちなみに天然ものよりも養殖ものの方が脂肪分は多い。また、不眠症、疲労感をやわらげる働きなどがあるビタミンB1、ビタミンB2も多いのが特徴。
養殖ものは年間を通して脂がのる。熱を通しても身が締まり過ぎない。
身がふっくらとして張りがあるもの。血合いが鮮やかで赤いものを選ぶとよい。
刺身、焼き物、汁物、鍋、煮物など。あらからはよいだしが出る。
サーモントラウト
サケ科タイヘイヨウサケ属
Oncorhynchus mykiss (Walbaum)
ニジマスを海で養殖
サーモン(トラウト)は体長50cm~1mほどで、身はとてもきれいなピンクがかったオレンジ色である。鮭と同じ魚だと思われがちだが、サーモンと鮭は異なる魚。鮭は鱒の一種で、川で産卵をして海に下る海水魚のこと。主に白鮭、銀鮭、紅鮭などがある。一方、サーモンは淡水魚。淡水魚といっても天然の川に生息しているのではなく、ニジマスを海水で養殖したものであり、日本ではお寿司屋さんで人気のネタとして知られている。
スーパーで見かけるサーモン(トラウト)は、アメリカ・ワシントン州大学のドナルドソン博士が生み出したニジマスの改良品種「ドナルドソン」を、チリやノルウェーなどの海で養殖したものであることが多い。ちなみに、トラウトとは鱒のことである。また、キングサーモンはカナダやアラスカから、アトランティックサーモンはノルウェーなどから輸入されている。
鮭にはアニサキスという寄生虫がいるので生食には向かないが、サーモンは養殖においてエサや生育環境などを管理されているため生食が可能であり、なおかつ品質もとても安定しているのが特徴である。
サーモンは低カロリーな魚。他の魚と比較するとサーモンが100g約139kcalなのに対し、さんまが100g約297kcal、いわしが100g約169kcal。また、糖質も少なく100gに含まれる糖質はわずか0.1g。いわしが100g中0.2gということから考えても、とてもダイエットに向いている食品であることがわかる。低カロリーだが、栄養価は高く、たんぱく質を多く含み、筋肉を作るのに役立つ。その他、頭の働きをよくするとされるDHAや血液をサラサラにする効果が期待できるEPAも豊富。さらに他の食品で摂取が難しいビタミンDや抗酸化作用があるアスタキサンチンも多く含む。
身がしまっていて、プリプリとした食感。脂が適度に乗っているが、あっさりとした味。火を通しても身が硬くならない。
バナメイエビ
十脚目クルマエビ科 Litopenaeus属
Litopenaeus vannamei
日本国内や台湾、東南アジアなどで養殖
最近、スーパーでよく見られるバナメイエビは、もともとはメキシコやエクアドルなど中南米が原産のクルマエビの仲間。
バナメイエビはブラックタイガーと比較すると小ぶりで体色が白っぽいのが特徴で、低価格なのもうれしいポイント。その安さの秘密は養殖のしやすさにあり、ブラックタイガーは稚エビが成体になるまで6か月ほどかかるのに対し、バナメイエビは3~4か月。
また、ブラックタイガーは水底を這うように生息することから、一定面積での養殖量が限られるのに対し、バナメイエビは水中を泳ぐので養殖池全体で養殖することが可能で、生産量を多くすることができる。さらに、病気への耐性も強いことから、世界的にブラックタイガーからバナメイエビに養殖を移行する業者が増えている。
バナメイエビは、低脂質、高タンパクとダイエットにうれしい食材。エビの身はほとんどが筋肉なので、100gあたりの脂質は0.6g、タンパク質は19.6g。鶏むね肉100gあたりの脂質が5.9gなので、いかにバナメイエビが低脂質かがわかる。その他、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなどの栄養素も豊富に含まれる。また、バナメイエビは100gあたり約91kcalと低カロリー。ただし、天ぷらやフライなどに調理すると高カロリーになるので、カロリーを抑えたいのであれば、茹でエビなどがおすすめ。
身はしまっているが、ブラックタイガーと比較すると食感はソフト。甘味は強い。
シマアジ
スズキ目アジ科シマアジ属
Pseudocaranx dentex (Bloch and Schneider,1801)
青森県から九州地方の太平洋沿岸、沖縄諸島、西、北、南太平洋
大衆魚として知られるアジの仲間の中で、高級魚として知られるのがシマアジ。他のアジと比べると大きさ、カタチ、生態など多くの点で異なる。
まず大きさはシマアジは最大で120cmほどに成長。ただ、市場に流通するものは、養殖もので40cmほど、天然ものでも70cmほどの大きさが主流。カタチの特徴は普通のアジと比べると背が高く丸みを帯びている。
また、体にある横向きの黄色いラインも大きな特徴で名前の由来にもなっている。この黄色のラインがはっきりしているものほど新鮮な目印。スーパーなどでシマアジにお目にかかることがあったら、ぜひ押さえておきたいポイント。
200mよりも浅い海に生息し、小魚などを捕獲して食べる。また、シマアジは「ギュウギュウ」と鳴くことでも知られる。
旬は産卵前の春から秋にかけて。大型のシマアジは味も大味で中型までのものの方が美味しいとされている。小型のシマアジは一年を通して味がよい。
脳の働きを活性化されるDHAと血液をサラサラにする効果が期待できるEPAが多く含まれる。また、体内で作ることができないロジンやイソロイシン、ロイシンなどの必須アミノ酸も豊富に含む。さらに旨み成分として知られるグルタミン酸もたっぷり。
白身は透明感があり、血合いも赤くて美しい。加熱しても身が締まり過ぎない。養殖ものも美味しいが天然ものと比べると脂が多め。天然ものの方がより美味しいとされる。
キス(シロギス)
スズキ目キス科キス属
Sillago japonica Temminck and Schlegel, 1843
北海道南部~九州、朝鮮半島南岸・西岸、台湾、黄海
天ぷらの種としても人気のキス。シロギス(白鱚)とも呼ばれ、アオギス、ホシギスと同様にキス科に属する海水魚。本来の呼び名は「きすご」。語源は自然のまま、飾り気のないという意味の「生直(きす)」に魚の総称の「ご」をつけたことによる。
キス科の魚の特徴は細長い体と先が尖った小さな口。キス科の他の魚は45cmほどまで成長するものもあるが、キス(シロギス)は30cm程度。その美しい容姿から「渚の貴婦人」、「海の女王」などと称される。
キス(シロギス)が多く生息するのは、海岸付近の砂地や沿岸の砂地。太陽が昇り朝になると起きて、太陽が沈み辺りが暗くなると砂に潜り眠る。とても警戒心が強い性格で危険を察知すると眼だけ出した状態で砂に潜ってしまう。
キス(シロギス)の旬は6月から9月にかけて。その時期は産卵を控え、最も脂が乗り、身も引き締まっている。選ぶ際は白っぽいものは古い魚なので、透明感のあるもの、また、触って身が硬いもの、目が黒く澄んでいる魚を選ぶとよい。
脂肪分が少なくタンパク質を多く含むヘルシーな魚。また、各種アミノ酸も豊富に含み、必須アミノ酸を摂取するのにも有効な魚。さらに旨み成分として知られるグルタミン酸も含む。
上品な甘味のある白身でフワフワとした食感。刺身、焼き魚、揚げ物とどんな調理法にも合う。水分量が多いので、刺身などにする場合は三枚おろしにし、塩をふり、軽く水洗いするとよい。
マアナゴ
ウナギ目アナゴ科クロアナゴ属
Conger myriaster
北海道以南の日本列島、および朝鮮半島、東シナ海、台湾
ウナギ目に属する海水魚。ウナギ目は他にもウナギ、ハモ、ウツボ、ウミヘビなどがいる。アナゴ科には他にもクロアナゴや水族館で見られるチンアナゴもいるが、日本ではアナゴというと「マアナゴ」のことを指す。アナゴは狭いところを好む性質があり、穴に潜り込む性質があることから「アナゴ」と呼ばれる。
マアナゴは雄と雌で成長の大きさが異なり、雄は40cmほど、雌は90cmほどに成長する。内湾に生息するが、特に都市部にある湾、東京湾、三河湾、大阪湾、瀬戸内海などに多く生息する。漁獲量が多いのは愛知県、長崎県、兵庫県、島根県、愛知県、福島県、山口県など。
鮨や天ぷらに欠かせない食材で旬は夏。西日本では焼きあなごがポピュラー。広島の名物・あなごめしも人気がある。鮨のネタとしては関東は煮あなごが主流、関西では焼きあなごが主流。
マアナゴはウナギほどではないがビタミンAが豊富。ビタミンAには目や皮膚の粘膜を健康に保つ働きがある。粘膜細胞は感染症に対して最初に防御するもので、体内に侵入した菌などに対抗する白血球細胞にもビタミンAは必要なもの。また、ドライアイや夜盲症にもよい。さらに悪玉コレステロールを減少させるオレイン酸も豊富。
熱を通しても身が硬くならずフワフワの食感。大きいものよりも小ぶりのものの方が味がよいとされる。
タチウオ
スズキ目タチウオ属
Trichiurus lepturus
世界中の熱帯・温帯海域に分布。北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋、瀬戸内海。東シナ海大陸棚、渤海、黄海
全長1.5mほどにもなる銀色の細長い魚。日本刀で刃の長さが2尺(60cm)以上で太刀緒で腰から下げるものを太刀と言うが、姿が似ていることから太刀魚(タチウオ)と呼ばれている。また、エサを捕獲するために体を立て、立ち泳ぎすることが名前の由来となっているとの説もある。
世界中の熱帯・温帯域に広く分布し、沿岸部から大陸棚にかけて生息する。成魚と幼魚で1日のサイクルで逆の行動を取ることでも知られる。幼魚は昼間は海底から100mほどの場所で生活し、夜になると海面近くまで移動。オキアミなどを捕食する。反対に成魚は昼間は上の方、特に朝夕は海面近くまできて、イワシなどを捕食し、夜は海底に潜る。タチウオの歯はとても鋭く、上顎の大きな歯が内向きに生えている。一度噛んだ餌を逃さない仕組みになっているため、生きているタチウオを扱う時は手袋をして触らなければいけない。
体表に鱗がないのも特徴。そのかわりグアニン質という銀粉の層で覆われ、白銀色をしているのはこのため。グアニン質は触れるだけでも落ちるが、生きている時は常に新しい層が生成される。このグアニン質を用いてかつては疑似真珠やマニキュアのラメなどが作られていた。
多価不飽和脂肪酸のイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が豊富。EPAは血液をサラサラにしたり、血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを減少させる働きがある。DHAは脳の発達、老化防止に役立つと言われ、免疫反応の調整などの働きも期待できる。その他、カルシウムの吸収を促進するビタミンD、血行をよくするナイアシンも含む。
繊維質が少ない白身。肉質は柔らかで味はクセがなく淡白。で生や煮物などでも食べられるが、焼き魚、ソテーにも適している。
イワシ
ニシン目ニシン科
sardine
日本全国の沿岸から沖合にかけて
イワシはニシン科の魚で、マイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシなどの総称。イワシ科はなく、それぞれマイワシ属、カタクチイワシ属、ウルメイワシ属となる。日本全国に分布し、海面の近くを大群で回遊する。水族館でもイワシの回遊が展示されているところもある。比較的安価な魚で、古くから庶民に愛されてきたが、今では漁獲量が減り、以前のような安価では手に入らない。
イワシの代表選手、マイワシは漁獲量の約半数を占めるが、その年によって減少することもあり、そうするとカタクチイワシの漁獲量が増える。マイワシは20cm前後の大きさで旬は5月~10月。
カタクチイワシはマイワシよりも小さく15cmほどの大きさでイリコやアンチョビの材料に使用される。旬は9月~1月。
ウルメイワシは大きな目がうるんでいることが名前の由来。昔から目に棒を刺した干物、メザシに加工された。マイワシと比較すると脂が少ない。旬は12月~2月と冬に美味しい魚。
一般的に青魚は栄養価が高くヘルシーと言われるが、イワシもしかり。特に脳の活性化に深く関わるとされるDHA(ドコサヘキサエン酸)や中性脂肪を減少させると言われるEPA(エイコサペンタエン酸)も多く含まれる。また、カルシウムも豊富なのが特徴。吸収を助けるビタミンDも含むので効率よく摂取できる。
身は柔らか。とても傷みやすいので、鮮度のよいものを選ぶことがポイント。
キハダマグロ
スズキ目サバ科マグロ属
Thunnus albacares
全世界の熱帯・亜熱帯海域
マグロの仲間では中型種となり、成魚で全長240cmほど体重200kgにもなる。ただし、日本近海のものはこれよりも小型で全長150cmほど体重70kg程度のものが多い。名前の由来は第2背鰭と尾鰭が黄色、体色も黄色を帯びることによる。(キハダ=黄肌) イエローフィンツナとも呼ばれている。
全世界の熱帯・亜熱帯海域に分布するが、地中海域、日本海域には分布しない。水温18度~30度を好み、外洋の表層を群れで遊泳する。日本近海では季節的な南北の回遊を行なっている。
世界的に見るとマグロの仲間で漁獲量が最も多いが、日本での流通量はメバチマグロに続いて多い。乱獲のため、個体数は減少しているが、成長が早いのでそこまで危惧されていない。1年で体長50cm、2年で体長1mにも成長する。
キハダマグロはハワイではahi(アヒ)と言い、ハワイのご当地グルメ「アヒポキ」の材料として使用される。身は本マグロなどと異なり、頭から尾の近くまで均一の赤身。
高タンパク、低脂質。キハダマグロはマグロの中でも脂肪が少なくダイエット時には嬉しい食材。カルシウムなどミネラル類豊富に含まれるが、特に注目したいのが鉄分。キハダマグロは豊富に鉄分が含まれており、鉄分が不足しがちな女性にぜひ食べてもらいたい魚。また、ビタミン類ではナイアシンとビタミンB12が多く含まれているのも魅力。ナイアシンは皮膚粘膜の働きを高める効果、ビタミンB12はヘモグロビン生成を補う働きがあるとされている。脂肪分にはDHA、EPAを含む。
さっぱりとした味わい。油やバターと相性が良い。
ボラ
ボラ目ボラ科ボラ属
Mugil cephalus cephalus Linnaeus,1758
世界中の温暖な海や熱帯海域に広く分布、日本では北海道以南の各地沿岸、河川汽水域
沿岸の浅瀬、河川や水路などにも生息するボラ。今ではありふれた魚のボラだが、江戸時代の頃は高級魚として贈答用にも重宝された。ボラは水質が汚れたエリアでも生きられる生命力を持っているので、そのような環境で育ったボラは臭みがあるが、水のきれいなエリアに生息するボラはおいしく食べることができる。
ボラは出世魚で「ハク」→「オボコ」→「スバシリ」→「イナ」→「ボラ」→「トド」と成長に応じて呼び名が変わる。ボラの段階は全長30cm~40cmに成長する。
ボラの旬は10月~1月。冬のボラは「冬ボラ」と呼ばれ、脂がのって美味。また、ボラの卵は日本三大珍味の一つの「カラスミ」の原材料。
ボラはタンパク質やビタミンB群などが豊富。その他、中性脂肪を減少させる効果が期待できるDHA、細胞でエネルギーを生み出す際に働く酵素を補助するナイアシンなどを含む。また、カリウムやマグネシウムのミネラルも含まれる。
白身はほどよい甘味で淡泊な味わい。生で食べるとほどよい弾力。火を通すとフワフワした食感が楽しめる。皮が厚く、骨は硬い。アラからはいい出汁が出る。
トラフグ
フグ目フグ科トラフグ属
Takifugu rubripes
太平洋北西部、日本海西部、黄海、東シナ海など
冬の味覚として知られるトラフグ。漢字で表記すると「虎河豚」。河豚とは中国では美味しい肉を豚と呼ぶことから、河で獲れる美味しい肉という意味から河豚、また中国に生息するメフグが豚のようにブウブウと鳴くからとされている。
トラフグはフグの中でも大きい種で70cmほどに成長するものもいる。胸鰭の少し上に大きな黒い斑点がある。鋭いカミソリ状の歯が上下2枚ずつあり、噛まれると人の指も食いちぎってしまう。
フグは毒を持つことで知られるがトラフグも1匹で13人が死んでしまうほどの猛毒。ちなみにマフグは1匹で33人と最も毒性が強い。産卵期は3月~5月だが、毒性は産卵期直前に最も強くなる。
産地で有名なのは山口県下関市。他、九州などで水揚げされるが、昨今はいろいろな土地で養殖もされている。比較的西日本で食される。500種ほどあるフグの仲間の中でも食用可能は22種あり、中でもフグ科トラフグ属だけで13種を占める。トラフグが美味しいのは秋の彼岸から春の彼岸までとされるが、特に寒い季節が旬とされる。
皮や骨まわりにはコラーゲンがたっぷりと含まれ、美肌にはもってこいの食材。他にもたんぱく質はもちろん、カルシウムやマグネシウムも豊富。また、疲労回復にもよいとされるタウリンも含む。
身は白身でもっちりとした食感が楽しめ、皮はコラーゲンでプリプリ、コリコリとした食感が堪能できる。
キンキ
カサゴ目フサカサゴ科キチジ属
Sebastolobus macrochir
日本列島東部沖各地、サハリンから千島列島のオホーツク海およびベーリング海の深海
真っ赤な体色で大きな目と口を持つ高級魚。産地は主に北海道と東北。北海道ではキンキの名前で親しまれているが、正式な名前はきちじ。青森県、秋田県ではきんきんと呼ばれている。真っ赤な体色は鮮度が落ちると退色する性質を持つ。
赤くて目が大きな魚という特徴からキンメダイと間違われることもあるが、キンメダイはキンメダイ科の魚、キンキはフサカサゴ科の魚なので全く異なる魚。また産地も異なりキンメダイは相模湾から駿河湾となる。キンメダイよりもキンキの方が脂が多いのも特徴。また、値段も異なり、キンメダイよりもキンキの方が価格が高額で1尾あたり3倍近くする。
北海道ではオホーツク海側と太平洋側に分布し、水深150m~1200mに生息。大きな個体ほど深い海に見られるよう。回遊はほとんどせず、深浅移動をするのみで岩礁域に定住するものが多い。全長35cmほどに成長する。
非常に脂肪が多い魚なのでDHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸を豊富に含む。DHAの他にもEPAも豊富。これらは動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなどの効果が期待できる。他にも皮膚や髪の健康に役立つ銅も含む。
白身魚だが、脂が非常にのっている。肉質はやわらか。
アンコウ
アンコウ目アンコウ科アンコウ属
Lophiomus setigerus
太平洋、インド洋、大西洋、地中海、北極海
冬の珍味として知られるアンコウ。水深30m~500mの砂泥状の海底に生息する深海魚。平べったい形をしていて、海底に潜み、頭の上についた誘因突起を疑似餌として、小魚を待ち伏せする習性がある。アンコウは雄と雌で大きさが異なることも特徴の一つで雌は体長1m~2mにまで成長するのに対し、雄はなんと10cm~20cmにしかならない。従って、食用になるのは雌のみということになる。ちなみに頭の上の突起物が光るチョウチンアンコウは食べられない。
主な食用の種となるのはキアンコウ(ホンアンコウ)とアンコウ(クツアンコウ)。アンコウは「捨てるところがない魚」と言われる通り、骨・あご・眼球以外のすべての部位を食べることが可能。食べられる部位は「アンコウの七つ道具」と呼ばれ、「身(柳肉)」、「皮」、「水袋(胃)」、「肝」、「ヌノ(卵巣)」、「エラ」、「ヒレ(とも)」が食べられる。
アンコウの旬は11月~3月、特に美味しいとされるのが産卵直前の1~2月。この時期のアンコウは栄養をたっぷり蓄えていて、肝もこの時期が最も大きい。また、アンコウは身が柔らかくぬめりも強いため、吊るし切りされる。
アンコウは85%以上が水分で身は100gあたり54kcalと非常に低カロリー。しかしながら、肝は100gあたり401kcalと高カロリーなのでカロリーを気にしている人は注意。ハイカロリーな肝だが、栄養価は高く、ビタミンAやビタミンD、ビタミンB12、DHAやEPAも豊富に含まれる。さらに皮には美肌に嬉しいコラーゲンがたっぷり含まれる。
「身(柳肉)」は白身で淡泊。皮はコラーゲンたっぷりで味わいも深い。肝はアンキモと呼ばれ、まったりとした濃厚な味わい。
サヨリ
ダツ目サヨリ科サヨリ属
Hyporhamphus sajori
北海道〜九州南岸までの日本海・東シナ海沿岸、北海道〜土佐湾までの太平洋沿岸、瀬戸内海など
北海道から九州の沿岸に生息するの魚。成魚は体長35cm〜40cmほどの大きさになり細長い。体色は銀青色でお腹は白色。尖ったように見える口先が特徴的だが、実は口が尖っているのではなく、突き出しているのは下顎。またその下顎が赤くなっているのも特徴の一つ。その赤さが鮮度の良さの見分けにもなる。また、体色が白くてとても綺麗なのに、お腹の中は真っ黒という事実もなかなか面白い。
「春告魚」と呼ばれるように旬は3月から5月。しかし、通年出回っており、実は秋冬も旬。これはどうしてかと言うと、サヨリは北海道から九州と広範囲で採れるため、旬の時期が異なることによる。千葉県は晩秋から早春の11~3月、石川県や広島県は春の3~5月が旬とされる。
日本全国いたるところに生息していることから、地方のよって呼び名もさまざま。新潟ではハリヨ、東京ではカンヌキ、和歌山ではヤマキリ、兵庫ではヨロズ、北九州ではカンノウオと呼ばれている。
サヨリは沿岸の表層を群れて泳ぐ回遊魚。「沢寄り」に多く集まることからサヨリと呼ばれるとの説もある。日本では古くから上品な味わいで人気がある高級魚である。
脂肪分がほとんどなく低カロリーなのが魅力。亜鉛やカルシウム、ナイアシンなどの栄養素を含んでいる。ナイアシンは二日酔いの原因となるアセトアルデヒドの分解を助ける効果が期待できることも知られているので、お酒を飲む時に一緒にサヨリを食べるとよい。
軽く茹でるととろけるような食感が楽しめる。味は上品で淡白な味わい。
トビウオ
ダツ目トビウオ科ハマトビウオ属
Cypselurus agoo (Temminck and Schlegel, 1846)
太平洋、インド洋、大西洋の亜熱帯から温帯の海。日本列島周辺でも北海道~屋久島まで広い範囲に分布。
トビウオはトビウオ科の全種を指す。体の背は青色、腹は白色、胸鰭がとても大きく発達しているのが特徴。日本列島周辺では北海道~屋久島まで広い範囲に分布していて、約20種存在する。トビウオはその名の通り、水面近くを飛行する。胸鰭と腹鰭を広げて飛行する姿はまるで翼を広げたグライダーのよう。滑空距離は優に100mは飛び、中には500m近く飛ぶものもある。また、空中滑空時は時速50-70kmといわれる。
食用になるトビウオはハマトビウオ、ツクシトビウオ、マルトビウオ、トビウオの4種。ハマトビウオは大型で50cmほどに成長するものもいて、値段も高い。主な漁場は九州南部から四国沿岸の太平洋、伊豆諸島など。ツクシトビウオは中型で体長は35cmほど。主に高地や和歌山、山陰が漁場となっている。旬は種類によって異なるがハマトビウオは春で「春トビ」、ツクシトビウオは夏に獲れるので「夏トビ」と呼ばれる。
九州北部から日本海側ではトビウオのことを「あご」と呼び、出汁として使われていることが多いが、他にも刺身や焼き魚、すり身にした加工品としても多用されている。中でもすり身を香ばしく焼き上げたちくわ「あご野焼」が島根県の名産品として有名である。
活性酸素を抑え、体内の不飽和脂肪酸の酸化を防ぐ働きがあるビタミンEや、二日酔いを予防する効果が期待できるナイアシンも多く含んでいるので、お酒のお供にもうってつけの魚。
上品な味わいの白身で脂が少ないが、旨味が強い。
メバル
カサゴ目フサカサゴ科メバル属
Sebastes Cuvier, 1829
北海道南部から九州にかけて
全長20cm~30cmほどの大きさで、体は黒褐色、太く黒い横縞が数本ある。メバルとは漢字で「目張」と書くように眼が大きく張り出していることからその名がついた。早春の海釣りの代表的な魚であることから、「春告魚」とも呼ばれる。
2008年まではアカメバル、クロメバル、シロメバルの3種の総称としてメバルとされていたが、それぞれ別の種とみなすようになった。海岸近くの海藻が多い岩礁域に群れをなして生息する。磯や防波堤などで釣れるのはクロメバル、沖で釣れるのはアカメバル。アカメバルはそのため「オキメバル」とも呼ばれる。
カサゴは海底にいることが多いがメバルは岩礁などで泳ぎ回っていて、その時に立ち泳ぎをしているものもいる。メバルは群れで泳ぐ習性があるので、一度釣れると同じ場所で複数匹釣れることが多い。
脂肪分が少なく、良質なタンパク質を多く含む。EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)の不飽和脂肪酸も豊富。EPA、DHAには悪玉コレステロールや中性脂肪を減少させる働きがあるとされる。また、動脈硬化の予防にもよい。
白身で非常にたんぱくな味わい。刺身はシコシコとした食感が楽しめる。
シタビラメ
カレイ目ウシノシタ科
魚の総称のため学名なし
世界中の温帯域、熱帯域に分布
フランス料理でよく利用されるシタビラメ(舌平目)。シタビラメとは魚の固有名詞ではなく、ウシノシタ科とササウシノシタ科の魚の総称。ササウシノシタ科の魚は体の右側に目がある。こちらは小型なので、ほとんど食用にはされていない。ウシノシタ科の魚は左側に目がある。
シタビラメはわかりにくいが、ヒラメとは種が異なる。ヒラメはカレイ目ヒラメ科の魚。ウシノシタは漢字で「牛の舌」。牛の舌に姿が似ていることによる。薄くて平べったく、長い楕円形。
また、九州の有明海・八代海沿岸では姿形が靴底に似ていることから「くつぞこ」と呼ばれる。他にも「ゾウリ」と呼ぶ地方もある。英名は「sole(ソール)」。こちらも靴底の意味。
日本ではウシノシタ科の体が黒色をしているクロウシノシタ、体が赤色のアカシタビラメがよく漁獲されている。沿岸の砂泥底に生息する。砂泥底に張り付くように潜んで、小さな甲殻類や小さな二枚貝などの底生動物を捕食する。
身はとても薄いので、三枚におろさずそのまま調理するのがよい。脂肪分が少なく水分が多いので、調理前に下処理として塩をふって身を締めるとよい。
脂質がとても少なく、高たんぱく。消化もよいので、高齢者や病中の人のたんぱく源としても重宝する。酵素をサポートする働きがあるビタミンB12も含む。
淡白な味わいで、身は柔らかくフワフワとした食感。
アジ
スズキ目アジ科
Caranginae
北海道全沿岸から九州南岸の日本海、東シナ海、太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、東シナ海大陸棚域
全世界の熱帯・温帯海域に生息。日本では北海道から九州、沖縄の沿岸域で群れで生息する。アジはその名のとおり、味の良さが語源とされている。多くの種類が知られていて、大きさは全長15cmほどのミヤカミヒラアジから全長1m50cmほどにもなるロウニンアジまでまちまちであるが、日本にて一般的に「アジ」と言うとマアジを指すことが多い。マアジは古くから日本で食用魚として重宝されていて、体表が銀色に輝いているのが特徴。
背側がやや暗い色になっているのは鳥からの捕食をまぬがれるためとの説もある。機敏な泳ぎで引き締まった身が、独特の食感のよさへとつながっている。
いわゆる青魚なので、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれる。DHAとEPAはオメガ3脂肪酸で、血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させると言われ、動脈硬化や心臓疾患の予防に役立つ。また、DHAには記憶力を維持する働きも期待されている。他にもカルシウムやタウリンも豊富に含まれる。
マアジは大きいものよりも中型くらいの方が美味。刺身、焼き魚、唐揚げ、フライなどさまざまな料理に適している。
シログチ
スズキ目ニべ科シログチ属
Pennahia argentata (Houttuyn,1782)
宮城県・新潟県以南の日本海、太平洋沿岸から黄海、東シナ海などに分布
シログチは漢字で表記すると「白愚痴」。ニべ科の魚は浮き袋を使って「グーグー」と鳴くが、この様子が愚痴を言っているように見えることから、「グチ」と呼ばれるようになった。その中でも、体全体が白いためシログチとなった。体色によって「クログチ」、「キグチ」、「アカグチ」もいる。また、ニべ科の魚は頭の中にある扁平石(耳石)がとても大きいため、イシモチとも呼ばれる。
シログチは成魚で体長40cmほどの大きさ。体は側扁形でやや体高がある釣り鐘型。暖海性の海水魚で日本では宮城県・新潟県以南の日本海、太平洋沿岸に分布する。水深20m~100m程の砂泥底に生息。小魚やエビ、シャコ、カニ、ゴカイなど主に甲殻類を捕食する。
普段は深い海にいるが、初夏から夏にかけての産卵期には沿岸の浅いところまでやってきて産卵をする。稚魚は最初の頃はそのまま浅瀬で生息するが、成長するとともに深場へと移動する。
旬は、子持ちとなる春から初夏にかけてと、身に脂がのる11月〜2月の二通り挙げられることが多いが、どちらもそれぞれのおいしさがある。
また、鮮魚として需要がある他、蒲鉾などの練り製品の原料として重宝されている。
脂肪分が少なく、良質のタンパク質を多く含む。さらに、必須アミノ酸をはじめ、旨み成分であるグルタミン酸も豊富。
白身でクセのない味。水分が多い。すり身にすると粘りが出て弾力が増す。皮目がとてもおいしい。
アユ
キュウリウオ目アユ科アユ属
Plecoglossus altivelis
北海道西部以南の日本各地、朝鮮半島やベトナム北部など東アジア一帯
全長約10cm~30cmほどの大きさの日本では代表的な川魚。ただし、本来は川と海を回遊する魚。秋に川の河口付近で孵化し、河口近くの海でプランクトンなどを食べて過ごす。冬を越し、春になると5cm~10cmほどに成長した稚魚となり、川を遡上し始める。天然のアユは川石に付着した藻を食べ、「香魚」と呼ばれるほどスイカのようなよい香りを放つ。しかし、このような食性による影響を受けない養殖のものはほとんど香ることがない。
旬は初夏から夏。俳句の季語にもなっていて、万葉集などでも多く読まれる。また「若鮎」は春、「落鮎」は秋、「氷魚(ひうお、鮎の稚魚の別名)」は冬の季語として、春夏秋冬すべての季語にかかわっているのも特徴。
主な産地は茨城県、神奈川県、栃木県、岐阜県などで特に養殖が盛んなのは、愛知県、和歌山県、岐阜県など。アユの遊漁解禁日は地域によって異なるが6月1日前後のところが多い。7月頃のアユは骨も柔らかく、美味しいとされる。
アユは栄養価も高い魚。ミネラル、カルシウムが豊富。特にカルシウムはマイワシと比べると3倍も多く含まれる。また、アユのタンパク質は加熱しても変わらないので、1匹で成人が1日に必要なタンパク質の1/4を摂取できる。養殖のアユは恵まれた環境で育てられていることから、脂ののりがよく、脂質は天然ものと比べると3倍ほど多い。この脂質はオメガ3系の多価不飽和脂肪酸でEPAとDHAを多く含む。また、内臓にはビタミンAが含まれ、天然ものと比べると4倍多いと言われている。ビタミンAは目の神経伝達物質となるほか、粘膜の細胞を保つ働きがあるとされ、免疫力を高める効果もあるとされる。
身はフワフワで上品な香りと味わい。頭から尻尾まで食べることができる。
ホッケ
カサゴ目アイナメ科ホッケ属
Pleurogrammus azonus
北海道全沿岸、青森県から熊野灘までの太平洋沿岸、青森県から山口県までの日本海沿岸
細長い釣り鐘形をしていて、最大で体長60cmほどになる。アイナメの近縁となるが、尾鰭が二叉することが特徴となる。体には側線が5本存在し、ぼんやりとした黒色の横帯が見られる。
幼魚は青緑色の体色をしているが、成長すると褐色になる。幼魚のうちは浅いところに住んでいるが、成魚になると水深100m前後の大陸棚に生息する。ただし、産卵期には浅いところに住み、水深20mよりも浅い岩の間などに卵を産む。卵は雄が孵化するまで保護をするが、その間餌を食べられない。
ホッケは鮮度が落ちやすいので、流通などが発達していない時代はあまり食用とされていなかった。しかし、第2次世界大戦後の食糧難の時期には、大量に捕れて安い魚であることから、食料として重宝されていた。今は流通も発達し、独特の脂の乗りと食感で居酒屋メニューとしても人気。
ホッケはシマホッケとマホッケがいるが、干物などの加工品になるのはほとんどがシマホッケである。鮮度が落ちやすいので、干物など日持ちがするよう加工品として売られている。
ホッケはカルシウムを豊富に含む魚。骨ごと食べられる魚には劣るが骨を外して食べる魚の中ではトップクラスの含有量。また、アルコールの分解に必要されるナイアシンも豊富で、お酒のおつまみにホッケを食べるのは理にかなった食べ方。他にも血液をサラサラにするとされるEPAや認知機能をアップする効果があるとされるDHAも多く含む。
シマホッケは淡泊でホクホクしている。マホッケは脂が乗り、プリプリとしてジューシー。
カジカ
スズキ目カジカ科カジカ属
Cottus pollux
北海道南部以南の日本各地
成魚は体長20cmほどになり、雄の方が雌よりも大きい日本固有種。体色は黒褐色で紡鐘型をしている。「カジカ」という名前は、古くは体から発する鳴き声のような音が川に生息するカジカガエル(河鹿蛙)に似ていたからという説や、身が鹿肉のようにおいしいから、などという説に由来する。また、各地域で他のハゼの仲間とともに、「ゴリ」、「ドンコ」と呼ばれている。
生態によって2種類に分けられ、生涯を通して河川に生息するものは卵が大きいことから「大卵型」、淡水で産卵、孵化すると川を下って河口付近で生息し、成長すると再び遡上するものを「小卵型」と呼ぶ。大卵型は川の上流域に生息することが多く、小卵型は川の中流から下流域にかけて生息する。肉食で小魚や水生昆虫、甲殻類、ミミズなどを捕食する。泳ぎがあまり得意ではないので、流れが緩やかな場所で川底を這うようにして泳ぐのが特徴。それらの生態を利用した、川底に固定した網に強引に追い込んで引き上げる漁法「ゴリ押し漁」が、強引にことをすすめることのたとえでよく使われる「ゴリ押し」という言葉の語源になっているとも言われる。
また、漢字での表記「鰍」からみてもわかるように歳時記の季語は秋に分類されるが、旬は産卵が終わった6月~12月頃。可食部は少なく、鮮度が落ちるのも早いが、山間部では貴重なタンパク源として重宝されてきた。
タンパク質と脂質が主成分となっていて、脂質はオメガ3脂肪酸であるEPAとDHAを多く含む。EPAには血液をサラサラにする効果、DHAは認知機能の低下を抑制する可能性がそれぞれ期待されている。
見た目はあまりよくないが、風味はよい。身はクセがなく淡泊。カジカの身と骨からはよい出汁がでるので、味噌汁や鍋ものにうってつけ。
サメ
軟骨魚綱板鰓亜綱ネズミザメ上目、ツノザメ上目
魚の総称のため学名なし
北太平洋からオホーツク海(ネズミザメ)
サメ類は世界で約540種ほどいるとされている。サメと聞くと危険な生物という印象が強いかもしれないが、被害を与えるどう猛なサメは全体のおよそ6%、20~30種類。日本周辺では約120種のサメがいて、注意が必要なのはホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの3種となる。
また食材としても使用されるが、肉には尿素が含まれている。そのため、死ぬと急速にアンモニアに分解されてアンモニア臭が生じることから、新鮮なうちに食用とすることが第一条件となる。
そして、サメを食べると言えば外せないのが「フカヒレ」。フカとはサメのことを言うので、「フカヒレ」はサメのヒレということ。中華料理の高級食材として重宝され、ネズミザメやヨシキリザメなどが用いられる。ネズミザメは東北地方で漁獲され、特に気仙沼は有名。東北地方ではモウカザメとも呼ばれる。
肉ははんぺんや蒲鉾などの練り物に使用されることが多い。広島ではサメを使用した料理を「ワニ料理」と呼び、昔から親しまれている。三重県では「サメのタレ」と呼ばれる干物を食べる風習がある。
サメはDHAやコンドロイチン、グルコサミンやコラーゲンなどを含み栄養価が高い。サメの肝臓から抽出した肝油は肝油ドロップの原材料となっている。肝油にはビタミンAとビタミンDが含まれる。ビタミンAは皮膚や粘膜の代謝に関わるとされていて、目や肌によいとされている。ただ、脂溶性ビタミンなので食べすぎには注意が必要。
ネズミザメの肉質はとても柔らか。
ハタ(マハタ)
スズキ目ハタ科マハタ属
Epinephelus septemfasciatus
日本では仙台湾から九州南岸までの太平洋、瀬戸内海、北海道以南の日本海、東シナ海、屋久島、八重山諸島などに分布
ハタとはハタ科の魚の総称でもあるが、狭義では高級魚としても知られるマハタのことを指す。
ハタ(マハタ)はとても大きくなる魚で180cmほどに成長する場合もある。40cmくらいまでの若魚の体色は小豆色で7本ほどの白い横帯があるのが特徴。成長とともに帯は薄くなっていき、100cmほどに成長すると体色は黒くなる。幼魚のうちは浅瀬で暮らしているが、成長するにつれて深く潜っていく。老魚は深海に生息し、カンナギと呼ばれる深海魚となる。
大型のハタ類では最も北部に生息する魚で仙台湾まで生息するが、主な漁獲地は山口県、福岡県、長崎県の西日本となっている。マハタは漁獲量が少なく馴染みがないためか、他の魚と間違えられることもあるようだ。名前が似ている「ハタハタ」は体長が20cmほどの小さな魚。大型魚であるマハタとは大きさが異なるため、見た目で間違えるということは少ない。高級魚のクエもマハタと間違えられやすいが、マハタが小豆色なのに対してクエは茶褐色と微妙に色が異なる。また、クエは体長100cmほどにしかならないので、マハタの方が大きく成長する。マハタの旬は秋から春。
マハタはDHAやEPAを多く含む。二日酔いの原因となるアセトアルデヒドの分解を助ける効果があるとされるナイアシンも含むので、お酒の肴としても最適。また、うま味成分としてしられるグルタミン酸も多く含まれるので味がとてもよい。
透明感のある白身でプリプリとした食感が特徴。新鮮なものほど身がしまっているので歯ごたえを楽しめる。
ワカサギ
キュウリウオ目キュウリウオ科ワカサギ属
Hypomesus nipponensis
日本海側は島根県以北、太平洋側は茨城県以北
氷の穴に釣り糸を垂らして釣るワカサギ釣りは冬の風情ある光景のひとつ。「わか」は若い、「さぎ」は小魚、細魚を意味する。山陰地方はアマサギ、北陸ではソメブリなどと呼ばれる。体長は15cmほどで細長い。
ワカサギは河川を下って海で育ち、産卵のために河川を遡上する「両側回遊型」と河川などで一生を過ごす「陸封型」がいる。また、少し水質が悪いところでも生息できるため、山中湖や諏訪湖など、内陸部の湖でも生息することができる。寿命は1年とされるが、中には2〜3年生きる個体もいる。卵は直径1mmぐらいで護岸や淡水の草木などに産み付ける。底生性の昆虫や動物プランクトン、稚魚、魚卵などを捕食する。
漁期は10月から3月で特に3月くらいのものは脂がのって美味。茨城県の霞ヶ浦、島根県の宍道湖や滋賀県の琵琶湖が名産地として知られる。新鮮なものは輝くような銀色をしている。
頭からまるごと食べられることもあって、カルシウムを多く摂取できる。その他にも疲労回復によいとされるカリウム、貧血によいとされるビタミンB12も多く含む。また、免疫力に関係するとされる亜鉛も豊富。
淡泊で上品な味わい。内臓も一緒に食べる。小さなものは骨も柔らかく食べやすいが大きいものは骨が少し硬く感じられることもある。
カサゴ
スズキ目メバル科カサゴ属
Sebastiscus marmoratus (Cuvier, 1829)
北海道〜九州南岸の大平洋沿岸と日本海・東シナ海、瀬戸内海
北海道から九州にかけて日本各地に生息する。福岡県、長崎県などではアラカブ、鳥取県、島根県ではボッカ、広島県ではホゴ、三重県ではガシなど、各地方によってさまざまな呼び方がある。
カサゴは沿岸の間際から水深100mほどまでの岩礁域などに生息し、小型のエビなどの甲殻類や小魚などを捕食する。テトラポットの隙間などにもよくいる魚なので、船釣りだけでなく、防波堤でも釣ることができる。
カサゴは卵は産まず、体内で受精し、孵化するまで体内で育て、稚魚になったところで産む。こうすることで、少しでも多くの稚魚を残そうとしている。
体長は25cmほど。背鰭や腹鰭などに棘条があり、エラ蓋にも鋭い棘があるので、注意が必要。体色は個体差があり、赤っぽいものから茶色、黒っぽいものもいる。体や鰭に無数の白い斑点がある。通年水揚げがありどの季節も美味しい。白身魚の中では鮮度が落ちるのが早いほうなので、早めに食べることがおすすめ。身だけでなく、アラからもいい出汁がとれる。
タンパク質を多く含み、脂肪が非常に少ないとてもヘルシーな魚。
白身は透明感があり、適度な脂がのり、さっぱりとしながら旨みがある。熱を通しても硬くなりすぎない。
ノドグロ
スズキ目ホタルジャコ科アカムツ属
Doederleinia berycoides
太平洋西部、日本から東南アジア、オーストラリアまで幅広く分布し、日本では日本海沿岸と南の太平洋沿岸域に生息。
日本では日本海沿岸と南の太平洋沿岸域に生息するが、特に新潟県から長崎県辺りまでの日本海側で多く漁獲され、北陸から山陰地方の特産品としても知られる。
ノドグロは1kgあたり2000円以上ともする高級魚として有名だが、この呼び名は北陸から山陰地方周辺に限られ、それ以外の地域ではアカムツと呼ばれる。「脂っこい」という意味の「むつっこい」、「むつこい」から「むつ」。「白身のトロ」と言われるほど脂が乗っている。
ノドグロが生息する水深はだいたい100m~200m。体長は大きいもので50cm、市場に出回るのは20cm~40cmが多い。体色は全体的に赤みを帯びているのが特徴で、「ノドグロ」という名前の由来どおり口の中の奥は真っ黒。晩秋から冬、産卵期の7〜8月と、ほぼ通年で楽しめる。
滋養がつく魚としても知られるほど栄養価が高い。特に脳の活性化によいとされるDHA(ドコサヘキサエン酸)や中性脂肪を減少させると言われるEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富。ほかにも抗酸化力が高く、免疫を正常に保つ効果が期待されるビタミンA、血圧を下げる効果があるとされるカリウム、丈夫な骨を作るカルシウムなどを含む。
脂を多く含む白身魚。しっとりとしていて、火を通しても柔らかい。
ニシン
ニシン目ニシン科ニシン属
Clupea pallasii Valenciennes, 1847
日本では日本海の富山県以北、太平洋側で犬吠埼以北。ベーリング海、北極海、北アメリカ大陸側ではカリフォルニア州サンディエゴ以北
ニシンは冷水域を好む回遊魚で日本海の富山県以北、太平洋側で犬吠埼以北に分布。日本に生息しているこの種は太平洋ニシンと呼ばれ、太平洋の北部、アラスカからカナダ、カリフォルニア州サンディエゴ付近までの広い海域に生息する。また、大西洋沿岸に生息するニシンもいて、こちらは大西洋ニシンとされる。
日本では別名「春告魚」と呼ばれ、これは春になると北海道沿岸に産卵のためにニシンの大群が押し寄せたことによる。このため、ニシン漁は春が盛ん。
「ニシン」とは「二身」が由来で、身欠きニシンは身を二つに割って作ることに由来する。ニシンは30cm~40cmほどの大きさで数の子はニシンの卵巣である。冷蔵・冷凍技術が発達していなかった時代はニシンの内臓などを取り除き、乾燥させたニシンの干物、身欠きニシンが加工された。身欠きニシンは内地の貴重なたんぱく源となり、京都ではニシンそば、加賀ではニシン寿司、大阪ではコブ巻などの料理が誕生した。
悪玉コレステロールを減らし動脈硬化や高血圧を予防する働きがあるとされる、一価不飽和脂肪酸のイコセン酸、オレイン酸を多く含む。また、多価不飽和脂肪酸のDHAやEPAも多く含まれる。ビタミン6、ビタミン12も豊富。
生のニシンは熱を通してもやわらか。
コイ
コイ目コイ科コイ属
Cyprinus Carpio
日本全国。世界中の温帯、亜熱帯地域に広く分布
日本全国の河川や湖沼に生息するコイ。もともとの自然分域はユーラシア大陸で、移植により世界中の温帯、亜熱帯地域に分布したとの説がある。日本には中国から移入されたと考えられているが、縄文時代の貝塚や古琵琶湖層から化石が発掘されていることから、日本でも自然分布していたという説もある。江戸時代には殿様に献上されるほどの高級魚であった。
形は側扁形で、体長は60cm前後、大きいものは1m前後のものもいる。湖や池や沼、河川では中~下流域の、流れの緩やかなところに生息する。また、生命力はとても強く、汚れた水質や低温にも対応するため、通常で約20年、長生きするものは80年間も生息することもあるという。
コイは淡水魚だが、寄生虫や強い臭みなど食用には向かない面もある。しかし、きちんと調理したものや、食用として養殖されている品種であれば問題ない。コイは傷むのが早いので、食べる場合は下ろしたての新鮮なものを選ぶこと。切り身の場合は張りがあるものがよい。
良質のタンパク質を含む一方、脂肪分も豊富。また、肝臓によいとされるタウリンをはじめとして、ビタミンB、D、Eも多く含まれる。栄養価が高いため病後の養生食としても最適で、薬用魚とも呼ばれる。
生で食べると、プリプリ・コリコリの食感が楽しめる。
ナマズ
ナマズ目ナマズ科
Silurus asotus
日本、中国、台湾、朝鮮半島などの河川や湖沼
日本をはじめとする東アジアの河川や湖沼に生息する淡水魚。頭部は縦扁しているが、体は側扁。口は幅広く、太く長い口ひげも特徴。鱗がなく、体の表面はヌルヌルとした粘液で覆われている。体長は60cm〜70cmに成長する。また、全身に味蕾という味覚器官があり、その数は20万とも言われるほど、全生物の中でも最も多い。
夜行性のため、昼間は河川や湖沼の岩陰などに潜み、夜になると口ひげを利用して餌を探し捕食する。動物食性で淡水に住むタナゴなどの小魚やエビなどの甲殻類、昆虫やカエル、亀など、貪欲に餌を食べるため、日本の淡水域の生態系において食物連鎖の上位に位置すると考えられている。しかし性格は神経質であるが故に暴れたりすることも多く、その昔、安政の大地震の前にも「ナマズが暴れた」という記録が残っている。
ナマズは昔から東アジア、特に中国料理でよく利用され、ベトナムでは煮つけがポピュラーな料理となっている。日本でも古くから食用とされており、平安時代の文献に記述が残されている。
ナマズは他の淡水魚と比べてもタンパク質がとても豊富。他にもカルシウム、マグネシウム、リン、鉄分、ビタミンA、ビタミンB群などの各種ビタミンなどの栄養素も多く含む。タイではスタミナ料理の食材としても扱われる。
淡泊な白身。味わいはウナギに似ている。
エイ
軟骨魚綱板鰓亜綱シビレエイ目、ノコギリエイ目、ガンギエイ目、トビエイ目
Batoidea Compagno
日本近海をはじめ世界中に広く分布
水族館でもよく見かけるエイは、軟骨魚類のうち、エラが体の下面、腹側に開くものの総称である。その種類はとても多く、数百種以上と言われている。
エイは頭部から胴部、胸びれが一体となって全体が扁平となっているのが大きな特徴だが、扁平な種類のサメとの見分け方としては、エラの位置に注目すると良い。
エイのエラは腹側にあるのに対し、サメのエラは体側にある。もともとエイはサメから派生した魚のため、似ているのもうなずける。また、アカエイ、マダラトビエイなど、尾に尾棘(びきょく)と呼ばれる毒針を持っている種もいるので、注意が必要だ。
古くから食用とされ、棘や尾以外はほぼ食べることができる。軟骨魚類は体内に尿素を蓄積しているため、死後にアンモニアが生成される。異臭の原因にもなるが防腐効果をもたらすので、冷蔵技術が発達していない時代から山間部でも食用とされてきた。そのため、スーパーなどで選ぶ時はアンモニア臭がしないものが新鮮さの目安となる。北海道では「カスべ」とも呼ばれ、一般的な家庭料理によく用いられている。
タンパク質を多く含み、水分が多く脂質は少ない。コラーゲンが豊富なので、調理すると煮こごりができる。
淡泊でクセのない白身でやわらか。
アイナメ
スズキ目アイナメ科アイナメ属
Hexagrammos otakii Jordan and Starks, 1895
北海道から九州までの沿岸部
浅い岩礁域や防波堤のテトラポットの陰などに生息する。全長30cm~40cmほどだが、大きいものは60cm以上の個体も。
アイナメは鮎と同様に群れを作らず、縄張りを持つ特性があることから「鮎並」と呼ばれていて、やがて「アイナメ」という名前になったとも言われている。また、四国や関西では「あぶらめ」、北海道では「あぶらこ」、「あぶらっこ」、新潟・秋田などでは「しんじょ」、「しじゅう」、「しじょう」などと呼ばれる。
体色は生息地の環境によって異なり、赤褐色、黄色、紫褐色など様々な色をしているが、雄は繁殖期になると「ワタリ」と呼ばれる黄色の婚姻色が現れる。産卵期は秋から冬で雌は産卵するとその場を去り、雄が孵化するまでの1か月間、外敵から卵を守る。
旬は産卵の前に栄養を蓄えている夏から秋。この時期のアイナメは脂がよく乗り、美味しいとされる。
高タンパク、低脂肪、低カロリー。骨や歯を丈夫にしてくれるカルシウムが豊富で、その吸収を高めてくれるビタミンDも多く含む。また、糖質の消費を活発にするビタミンB1も豊富だが、熱に弱いので、加熱時間が短い調理法にするとよい。さらに脂肪燃焼を促進し、肌や髪にもよいとされるビタミンB2も豊富。ビタミンB1、B2はともに水溶性なので、加熱調理した場合は汁ごと摂取できる煮物やお吸い物にするのがよい。
熱を通すとふんわりとした食感。上品でクセのない白身で、骨は柔らかい。皮は旨みと脂が多い。
サンマ
ダツ目サンマ科サンマ属
Cololabis saira
北海道〜九州南岸の日本海、東シナ海、太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、オホーツク海
秋の味覚を代表する魚と言えばサンマ。体が刀のような細長い形をしていることから、漢字では「秋刀魚」と表記する。寿命は1年~2年ほどで成魚の体長は35cm程度。大きいものは40cmを超える場合も。成魚は海の表層を大群で泳ぎ回遊している。日本近海のサンマは夏の間はオホーツク海で回遊し、秋の産卵の時期には南下をする。三陸沖から房州沖で9月から10月にかけて漁獲されるサンマはよく脂が乗った高級品。
鮮度の見分け方として、「背の青みがきれいで皮が張っているもの」、「身が固いもの」、「目が濁っていないもの」、「口先が黄色いもの」を選ぶこと。
ひと昔前は大衆魚として知られていたが、近年は漁獲量が減少している。その理由の一つに地球温暖化が影響していると言われている。
古くから塩蔵か干ものとして食べられており、今でも蒲焼きの缶詰などの加工品としての需要も高い。
IPA(イコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含む。IPAは血流をよくする働きがあるとされ、DHAは脳細胞を活発化させる働き、体内の悪玉コレステロール(LDL)を減らす作用が期待できるとされている。また、骨を丈夫にするビタミンDも豊富。
火を通しても締まり過ぎず身は柔らか。
マハゼ
スズキ目ハゼ科マハゼ属
Acanthogobius flavimanus (Temminck and Schlegel)
北海道から種子島までの沿岸部、朝鮮半島と中国の沿海地方。
マハゼは、スズキ目ハゼ科マハゼ属だが、ハゼの仲間は実に種類が多く、2000種類以上が確認されている。マハゼのマは「真」で、ハゼの代表的な魚という意味で、よく知られているムツゴロウやトビハゼ、ワラスボなどもハゼの仲間。体長15cm前後が標準だが、最大で25cmくらいのものもいる。
海底に暮らす底生魚で、稚魚は浮遊しているが、体長2cmくらいに成長すると海底で暮らすようになる。若魚は夏場は浅瀬や淡水域などで過ごし、冬はやや深いところに移動する。そして、春になると再び浅瀬に戻り、産卵をする。雄は産卵する雌を誘い入れるため、干潟などの砂泥底にY字型の巣穴を堀る。雌が卵を産んだ後は、ふ化するまで雄が卵を守る。河口域などに群れで行動しており、エサを貪欲に追いかけることから、釣り初心者や子供の入門種とされている。
また、マハゼといえば江戸前天ぷらの代表的な具材として知られる。その他、甘露煮や佃煮にしてよく食べられている。さらに焼いて干した「焼きはぜ」は主に出汁をとるのに利用されるが、宮城の郷土料理のひとつである「仙台雑煮」は、焼きはぜで出汁をとり、具としても食べられている。
脂肪分が少なく低カロリー。カルシウムとカリウムが豊富。
脂が少なく上品な味わい。身はふわふわとした食感。
シシャモ
サケ目キュウリウオ科シシャモ属
Spirinchus lanceolatus
北海道東部の太平洋沿岸
北海道の内浦湾から厚岸湾の沿岸地域にのみ分布する日本固有種。体長は12cm~18cm。背中は暗い黄色、腹部はきれいな銀白色。北海道大学の疋田豊治によって1913年に新種として発表された。シシャモにはアイヌ民族にまつわる数々の伝説が言い伝えられている。名前もアイヌ語で「スサモ」、「スシャモ」と呼ばれていたものがシシャモとして和名になったとされている。
スーパーなどでよく見かける「子持ちシシャモ」は外国から輸入されたカラフトシシャモのことで、北太平洋と北大西洋の北部など世界に広く分布する。代用魚のカラフトシシャモよりも脂ののりがよく、美味しいといわれる。
鮭と同様に、旬の秋になると群れをなして河川へ遡上して産卵をし、孵化した稚魚は海へ下降する。10月下旬から11月下旬の約1か月しか漁ることができない。漁期が短いため、昔は川がシシャモでいっぱいになるほどだったが、今では漁獲量が減り、日高より西のエリアでは絶滅の危機もあるとして北海道のレッドリストに取り上げられている。
足が早いので、干物などに加工されるが、漁期の地元では刺身や寿司ネタとして珍重されている。ヨモギの茎で吊るす「シシャモのすだれ干し」は秋の風物詩となっている。
カルシウムが非常に豊富。まるごと食べられるので、栄養素をそのまま摂取できることも大変な魅力。100g当たりのカルシウムの含有量は440mg。その他にもカリウムやリンなどのミネラル、ビタミンDなども含まれる。
雄の身は脂がのっている。雌は卵のプチプチ食感が人気。
ビタミンや必須ミネラル(*)、食物繊維を豊富に含む海藻類。日本人の不足しがちな栄養素に富んでいるにもかかわらず低カロリーで、現代の私たちにとっては積極的に食べたい食材の一つです。
一口に海藻と言っても非常に多くの種類があり、合う食材や調理法も様々。
ワカメは味噌汁や酢の物に、ヒジキは煮物によく使われますね。でも、いつも決まった食べ方をするよりも、少し変化を加えるのがおすすめです。数種類を少しずつ、できれば毎日継続的に食べて、様々なミネラルを補うようにしましょう。
海藻に含まれるビタミン類やミネラルは、油脂類と一緒に摂ると吸収率が高まります。一方で、海藻類の含む食物繊維には、腸内で糖質を吸収するスピードを緩める他、整腸、コレステロールや血圧の低下、抗がんと言った作用があります。
魚を海藻と組み合わせて食べることが肥満防止につながる、という可能性も指摘され注目されています。魚と海藻の組み合わせを積極的に日頃の食事に取り入れることで、太りにくく健康的な体作りができるかもしれません(*10)。
*必須ミネラル:現在、人間の身体に必要とされるミネラルは16種類とされ、これが必須ミネラルと呼ばれています。身体の構成成分になったり、体内の生理機能や代謝などの生命活動を維持したりする大事な役割を担っていますが、体内で合成されないため、食物として摂取する必要があります。
必須ミネラルは人体に含まれる量によって主要ミネラルと微量ミネラルに分けられます。
・主要ミネラル:カルシウム・リン・カリウム・硫黄・塩素・ナトリウム・マグネシウム
・微量ミネラル:鉄・亜鉛・銅・マンガン・クロム・ヨウ素・セレン・モリブデン・コバルト
日本は南北に長い海岸線を有しています。そのため、厳しい寒さの訪れる北のオホーツク海から、冬でも比較的温暖な沖縄近辺の海まで、様々な環境に色々な海藻が分布しています。ここでは、日本近海で採取できる、食用として比較的馴染みの深い海藻をご紹介します。
海藻を色で大きく分けると、緑藻・褐藻・紅藻という3つのグループに分けられます(*)。
日本でよく食べられる海藻たち
緑藻類 | 褐藻類 | 紅藻類 |
あおのり、あおさ、海ぶどう、など | こんぶ、ひじき、ほんだわら、もずく、わかめ、など | あまのり、てんぐさ、ふのり、など |
・緑藻(りょくそう)類
緑色の藻類。
世界では約6500種が知られており、そのうち約10%ほどが海産種。日本では淡水産種が約1500種、海産種が約300種生育します。
クロロフィルaとbの他、β‐カロチン、ルテイン、ゼアキサンチン、ネオキサンチン、ビオラキサンチンなどの色素を含んでいます。
・褐藻(かっそう)類
黄褐色ないし黒褐色の海藻。
世界では約1500種、日本では約280種が知られています。
葉緑素やβ-カロテンの他、フコキサンチンなどのキサントフィルを含みます。
・紅藻(こうそう)類
紅色、暗紅色、紫色の藻類。
世界で約5000種が知られており、大部分は海産です。緑藻類や褐藻類よりも深い海に生育できます。
クロロフィルa・d、キサントフィル、カロテンの他、フィコシアン、フィコエリトリンを多く含みます。
*緑藻、褐藻と黄緑藻を含む黄藻、紅藻の3種類に分ける場合もあります。
学名:Sargassum horneri
赤藻屑
ナガモ(新潟県)、ギバサ(秋田県)、ギンバソウ等
ホンダワラ科
全国の岩礁域。
ちなみに当社のある城ヶ島近辺でも取れます。神奈川県のアカモクもぜひご賞味ください!
大きさ:体長1〜3メートル。場所によっては全長10m近くになるものも。
形:長い茎、ギザギザとした葉。細長い円柱状の気胞の先に、やはりギザギザの葉を付けている。
春から夏にかけて海面に浮いて漂う。春先には海面を覆ってしまうこともあるため、船の運行の妨げとなり、自治体等に駆除に関する相談があるほど。
肥満、糖尿・がん等の生活習慣病、肌の衰え等が気になる人
春。
春に収穫&下処理されたものを冷凍で保存しておくと便利です。
メカブに似た食感でシャキシャキ、歯ごたえはメカブよりやや強め。細かく刻むと、強い粘り気が出てくる(オクラのような透明な粘り)。味や風味はあまりなく癖がない分、いろいろな料理に合わせやすい。
アカモクについての参考資料
・神奈川県ホームページ「神奈川県水産技術センター メルマガ418」
・京都府ホームページ「丹後の海の生き物」
・三重県ホームページ「アカモク」
・函館アカモク活用研究会
・コトバンク「アカモク」
学名:Enteromorpha spp.
英名:ALGAE/green laver
アオサ目アオノリ属(アオサ科アオノリ属とも)
「アオノリ」はウスバアオノリ、スジアオノリ・ボウアオノリ・ヒラアオノリ、フクロアオノリなどを含むアオサ目アオノリ属緑藻類の総称。
海岸、中でも浅海や河口付近の岩、磯の潮だまりなど。
淡水アオノリの中では、ヒラアオノリなどとともに日本沿岸の主要種とされる。
主な産地は、徳島県、高知県、岡山県、和歌山県、等。
鮮やかな緑色と香りの良さが最大の特徴。
アオノリ属の中では大形の種で、食品に利用するという点でも良質な種。
形:管状
色:緑色
大きさ:日本でよく採れるスジアオノリは、体長が1メートル以上、最大で5メートル程度にまでなる。
柔らかく、お茶のような上品な香り。
食用には主にスジアオノリが用いられ、乾燥させてふりかけや薬味とすることが多い。
西日本では和菓子に使われることが多く、
などがある。
煎餅、ポテトチップス、おかき、餅等の菓子類や雑煮にもしばしば用いられる。
「アオノリ」とカタカナではなく「青海苔」「あおのり」と漢字やひらがな書きの場合は、他属のヒトエグサやアオサなども含めた商品、加工食品を指す。
「青海苔」「あおのり」は、
では高頻度で用いられる薬味。ただしアオサの場合もある。
スジアオノリについての参考資料
・文部科学省 食品成分データベース「アオノリ」
・コトバンク「アオノリ」
・徳島県ブランド水産物 もの知り図鑑 すじ青のり
学名
紅藻類テングサ科:Gelidiaceae
マクサ:Gelidium amansii
オニクサ:Gelidium japonicum
テングサ目テングサ科
「テングサ」とはマクサ、オニクサ、ヒラクサ、ナンブグサ、オオブサなどを含むテングサ目テングサ科に属する紅藻類の総称。
「テングサ」という名前の海藻はない。
日本近海では20種余りが知られている中でも主なものはマクサとヒラクサで、一般に「テングサ」というとマクサを指す場合、寒天の原料となる海藻を指す場合が多い(*)。
* 寒天の材料には現在はテングサ以外の海藻も使われている。
水温の比較的高い海で、最も潮が引いたときの海面よりも深い岩の上に着生する。
最も潮が引いたときの海面付近の岩に着生するものもある。
マレー諸島、インド洋、大西洋等世界各地で見られる。
日本では各地の沿岸に分布、太平洋岸に特に多く、最も潮が引いたときの海面付近から深さ約15mほどの岩上によく生育する。
形:規則正しく叉状/羽状に分枝、樹枝状
色:紫紅色〜黄紅色
高さ:10〜30cm
煮溶かして固めると、弾力があり、かつ滑らかな食感。
水戻しして食べると、コリコリ感が少しあり、かつ滑らか。
寒天を煮溶かして固め、味付けをして食べるのが一般的。
定番は、
等。現在は寒天を使う料理やデザートが様々なレシピサイトで多数公開されており、和風のデザートはもちろん洋風デザートの他、
など多彩な食べ方がある。
テングサについての参考資料
・コトバンク「テングサ」
・長野県寒天水産加工業協同組合 寒天生活
布苔、布海苔、布糊、海蘿
鹿角菜(ろっかくさい、ろくかくさい)
マフノリ:真布苔、真布海苔、ホンフノリ(本布苔、本布海苔)
フクロフノリ:袋布苔、袋布海苔、ブツ(九州)、ノゲノリ
ハナフノリ:花布苔、花布海苔
学名
マフノリ:Gloiopeltis tenax
フクロフノリ:Gloiopeltis furcata
ハナフノリ:Gloiopeltis complanata
紅藻類フノリ科フノリ属
「フノリ」はフノリ科フノリ属の海藻の総称。
日本近海で生育するフノリは、マフノリ・フクロフノリ・ハナフノリの3種。
日本各地沿岸の潮間帯上部から中部あたりに群落を形成。
マフノリ:本州中部以南、特に九州西岸に多く分布
フクロフノリ:日本各地沿岸、千島列島から九州まで広く分布
ハナフノリ:東北地方以南に分布
ぬめりがあり、生だとぷりぷり、乾物はコリコリ
ほのかな磯の香り
煮たり茹でたりするととろみが出る
火を通す必要がないフノリは、サラダや酢の物の具材としてとても便利。
お刺身のつまにも◎。お魚と一緒にいただきたいものです。
生で、または水で戻して
汁物や麺類のトッピングにしてもおいしく頂けます。
煮込むとかたくり粉を入れなくても特有のとろみが出るので、寒い時期には体が温まる汁物の具にも◎。
さらに、つなぎとして使用されることも。新潟県特産のへぎそばにはフノリが練りこまれており、ツルツル感と弾力が増しています。
若布、和布
褐藻類コンブ目チガイソ科
分類上は1種類だが、
の3つに分けられることもある。
コンブ目チガイソ科には、長さ20mにもなる「オニワカメ」や、食用にはなるもののあまり食べられていない「アイヌワカメ」「アオワカメ」等もあるが、一般的に食されている「ワカメ」とは異なる。
Undaria pinnatifida (HARVEY) SURINGAR
日本各地の潮下帯
部位によって異なる。
中肋(ちゅうろく)は「クキワカメ」と呼ばれ、コリコリした噛み応え。
根の部分にあたるところは「メカブ」と呼ばれ、ぬめりが強く独特の歯ごたえがある。
また産地によっても異なり、三陸わかめは肉厚でシャキシャキ。
鳴門わかめはやや薄めだが、コシがあってしっかりとした、でも滑らかな食感。
九州のわかめは、柔らかく、かつしっかりとした食感。
生ワカメ
傷みやすいためあまり出回らず、しかも旬の3月~5月頃までの期間しか食べられない。
等で、塩蔵ワカメや乾燥ワカメにはない風味や歯ごたえを楽しめる。
塩蔵ワカメ・乾燥ワカメ
水で戻してから調理する。
調理の方法は極めて多様で、
等汁の実としても美味しいし、
としてもよく食べられる。
また油との相性がいいので、
のようにして食べるのも美味しく、栄養の吸収率アップにも◎。
ぜひ魚と合わせていただきたい海藻。
ワカメについての参考資料
・日本わかめ協会
・コトバンク「ワカメ」
海ぶどう、グリーンキャビア、クビレヅタ、クビレズタ
Sea grape,Green caviar
アオサ藻綱イワズタ目イワズタ科
Caulerpa lentillifera
南西諸島
高さ2m〜5m
匍匐(ほふく)茎(ランナー)を伸ばし、途中から茎が生える。この茎部が食用となる。
球状の小枝が密生しているため、「海ぶどう」と呼ばれる由来にもなっている。
茎と小枝の間がくびれていることから「クビレズタ」とも呼ばれる。
沖縄県の特産品としても有名。天然物と養殖物があり、圧倒的に養殖物の方が多く出回っている。10~5月ごろ旬で、緑色が鮮やかなものを選ぶとよい。
※「カウレルパラセモサエキス」は新陳代謝を促進させると言われており、肌荒れの回復や肌の機能を向上させる効果も期待されている。
ぶどうの房のように密生している小枝は、口に入れるとプチプチとした独特の食感をもつ。「フサイワズタ」という別の種類も、同じく「海ぶどう」として販売されていることもある。
最近では、同じクビレズタでも特徴の違う通称「海ゴーヤー」という種類も出回る。
海ぶどうの最大の特徴とも言えるプチプチとした食感ではなく、コリコリ、シャキシャキとした歯ごたえで、形は球状ではなく長細く、まるで小さなゴーヤのような形をしている。
温かい海水の中で育っているので、冷蔵庫での保存は厳禁。
しぼんで味が落ちてしまう上、プチプチ感も損なわれる。
味付けは主に醤油、酢醤油、ドレッシングなどと幅広いが、上からかけるよりも食べる直前につける方法が推奨されている。
カロリーは4kcal(100gあたり)、糖質も0.4g(100gあたり)ととてもヘルシー。
食物繊維も多く美容にオススメの食材と言えるが、養殖物は海水の塩気を若干多めに含んでいるため、塩抜きをしてから食べるとよい。
荒布、トロロメ
褐藻綱コンブ目レッソニア科アラメ属
Eisenia bicyclis
伊勢志摩、山陰地方(隠岐島周辺)
高さ0.5〜1m
コンブの仲間であるアラメは、ワカメ(若布)と比べると表面がシワ状で、でこぼこしていて荒いところから名がつけられたと言われている。
長く硬い茎をもち、2年目からは先端が二又に分かれ、それぞれの枝の先からさらにびっしりと葉部をつける。「カジメ」という似た種類のものがあるが、茎の先が分かれないので別種だと考えられている。
そのまま食用にすると渋みが強いので、渋抜きをする。単に天日干しにしたもの、天日干しの後に再び海水に浸して削って蒸したもの、板状に加工するものなど手間ひまをかけた製品が多い。
海中では岩礁上に群生するので、魚類の産卵場所として、そしてふ化した稚魚が育つ環境を整えてくれる重要な役割も持っている。
日本では西日本中心で古くから食べられており、関西ではお盆の食べ物のひとつとして挙げられるなじみ深い食材。
三重県周辺の伊勢志摩エリア、山口・島根県周辺の山陰エリアが主な生産地である。7月〜9月が旬。
細切りに加工してあるものは特に歯ごたえがある。大きめに切った製品は細切りよりも柔らかい食感となる。
単純に干しただけのものは水で戻してから熱湯をかけて刻むと粘り気が出る。白飯にかけたり、酢の物にしたりと、メカブのような食べ方をする。また他の海藻同様、味噌汁の具としてもおいしい。基本的にどの加工製品も水で戻し、炒め煮等にして食べることが多い。ひじきの調理法とほぼ同じである。
アラメそのものの味はほとんどないので、煮物等、味を含ませて作る料理に向いているが、最近はローカロリーと食感が活かせるマクロビオティックの素材のひとつとしても注目されている。
オゴ(Ogo)、ウゴ、海髪
紅藻綱オゴノリ目オゴノリ科オゴノリ属
Gracilaria vermiculophylla (Ohmi) Papenfuss
北海道、本州、四国、九州、南西諸島
高さ10〜30cm、太さ:1~2mm
日本では古くから食用として採集されていたことが書物等で確認されている。紅藻に属し、生体は濃い褐色~緑がかった褐色や暗褐色だが、湯通しすると鮮やかな緑色になることから、刺身のつまとして活用されることが多い。また、寒天の材料として、食用のほかにも工業用(シャンプーや化粧品など)、観賞用としても用いられる。
形はひも状で、断面は楕円形。長短の枝が分岐して成長し、夏には直径0.5mm〜1mmの嚢果をつける。世界各地に生息域をもち、淡水が混入して,しかも砂や砂泥におおわれやすい潮間帯から低潮線付近に多くみられる。人が立ち入ることのできる範囲でも採取可能だが、「オゴノリを摂取して死亡した」という事例が数多く報告されている。オゴノリそのものに毒性はないと言われているものの、有毒種の生体が付着しやすいため、海で個人的に採取してきたものをそのまま食用にすると、食中毒の原因となり得るので避けた方が賢明。刺身のつまで赤褐色の海藻が入っていることがあるが、それはほとんど「トサカノリ」であり、生体のオゴノリではないので注意が必要。
食用に加工されたものは味にクセがなく、適度のシャキシャキとした歯ざわりを楽しめる。
湯通しして刺身のつまとして大根や他の海藻とともに食したり、テングサの仲間のように寒天の材料として用いられたりもする。ただし、前述のとおり有毒な渦鞭毛藻類やフグの卵が付着したままの生食での摂取にて死亡例も報告されている。なお、市販品は加熱処理や石灰処理を施してあるため毒性を気にせず摂取できる。ハワイ諸島でも日系移民がオゴノリを食していたことから、今でも海藻を "Ogo"(オゴ)と呼び、ハワイ料理の「ポキ(poke)」の材料としても使用されている。
鶏冠海苔、鶏冠菜、鳥坂海苔
紅藻綱スギノリ目 スギノリ目 ミリン科 トサカノリ属
Meristotheca papulosa (Montagne) J.Agardh
本州太平洋岸中・南部,九州,南西諸島
高さ10〜30cm。葉は膜状で、色は赤褐色。平たく不規則に枝分かれしている。
房総半島以西の温海・暖海の外海、10メートル以浅の低潮線下よりやや深いところの海底に生息している。体は厚みのある膜質で、扇形のように成長してからさらに側部から枝状に伸び、不規則に分岐していく。成熟するとコブ状の突起がたくさん出てくるが、ポキポキと折れやすくなる。
鶏のトサカのような色合いと形から名がついたと思われるが、赤褐色の元の色に近い赤色だけではなく、天日に干して白色に脱色させたり、石灰水などのアルカリ性の水に漬けてから湯通しすることで緑に変色させたりして、見た目もカラフルに加工することが可能。紅色の色素フィコビリンだけが抜けてクロロフィルが残っていると緑色になり、日光に長時間当ててクロロフィルも退色させると白っぽくなる。色の変化のみで食感は変わらず、もともと味もそれほどない。しかし刺身のツマとして華やかさを添えるとあって、最近は世界中から輸入したり、国内でも養殖を試みるなどして、近年の海藻サラダ人気などの需要に備えている。
味にクセがなく、海藻独自の歯ざわりも多少はもつが、比較的柔らかいので食べやすい。
刺身のツマに代表される食べ方のほかにも、塩蔵品や乾燥品を使った、酢の物や味噌汁の具なども一般的である。
熊本県天草地方では、トサカノリを刻み、水で煮詰めて練り上げる「トサカこんにゃく」を郷土の味のひとつとしている。磯の香りただよう、とろりとした口当たりの良さが魅力。刺身のようにわさびじょうゆなどでいただく。
一重草、アオサ、アオノリ、アーサ
アオサ藻綱ヒビミドロ目ヒトエグサ科ヒトエグサ属
Monostroma nitidum Wittrock
本州の太平洋沿岸から九州〜南西諸島の潮間帯
高さ4〜10cm、一層の細胞から成り立ち、鮮緑色の葉っぱのような円形(配偶体)の部分を食する。
一般的に「アオサ」「アオサノリ」として食用で販売されているのはこのヒトエグサである。また、「青のり」として販売されているものの原料にもヒトエグサが入っていることもある。「アオサ」も食用にはなっているが、主に加工品として利用される程度で、むしろ富栄養化した内湾の海岸で大量発生して、環境問題を引き起こす要因となっている。ヒトエグサはヌルヌルしているのが特徴で、旬は冬から春で、大量に養殖されて主に海苔の佃煮の原料となる。
養殖は昭和の初め頃から三重、愛知、愛媛などで行われ、現在では四国、九州・沖縄でも盛んに行われている。摘採された藻体は淡水で洗い、脱水機で脱水し、枠のついた金網で天日乾燥を行う、色の濃いものほど品質が良い。
「一重草」の名の通り、一層の細胞から成り立つため、食感が柔らかく風味も良い。ちなみにアオサは二層から成り立つため、ヒトエグサより硬めである。
味噌汁、天ぷら、酢の物、サラダ
味は青のりよりも薄めだが、香りと色合いが楽しめる。加熱すると緑色がより鮮やかになるので、見た目も美しい。かき揚げなどの揚げ物や、おにぎりの具などにも活用される。生食は湯通しして、海藻サラダなどに利用されることが多い。
海苔の佃煮に加工されたものは、本来ヒトエグサに多く含まれるナトリウムやカリウム等が大幅に減少しているため、栄養素を効率よく摂りたい場合は乾燥したものを調理したり、生食用を利用したりするとよい。
ひじき
ヒバマタ目ホンダワラ科
Sargas sum fusiformis(HARVER)SETCHELL
北海道を除く日本各地
体長30~80cm。円柱状の茎から小枝が出ている。ひじきはホンダワラ類の仲間で、陸上の植物のように付着器、茎、枝、気胞、葉に形態が分化している。付着器は陸上植物の根に相当するが、養分を吸収する機能はなく、藻体を岩に固着する役目をしている。気胞の浮力によって海中で藻体を直立させている。私たちが食べているのは、枝、気胞、葉の部分。藻体は黄褐色だが、収穫後に加熱して乾燥されたものは黒色になる。収穫期は4月~6月。
芽ひじき(歯の部分)…細くて柔らか
長ひじき(枝の部分)…しっかりとした歯ごたえ
生ひじき
旬の4月~6月にだけ出回る生ひじき。生のままだと固く、アクも強いので下処理が不可欠。下処理の方法は、まず生ひじきをよく洗い、お湯で下茹でをする。独特な磯の香りと肉厚な食感は生ひじきならでは。さまざまな料理にアレンジ可能。
乾燥ひじき
乾燥ひじきをボウルに入れ、たっぷりの水につける。20分ほどしてひじきがふっくらとすればOKのサイン。次にひじきをザルにあげる。ボウルの底に砂やゴミがある場合があるので、注意する。ザルにあげたひじきはさっと水洗いをし、水を切って下ごしらえは完了。戻したひじきは冷蔵庫で2~3日保存できる。煮物などにすれば、さらに日持ちする。また、冷凍庫での保存も可能。保存袋に薄く平に入れて冷凍すれば、必要な量だけ割って使うこともできてとても便利。
水雲、海蘊、藻付、海雲
ナガマツモ目 モズク科 モズク属
Nemacystus decipiens
北海道を除く日本各地
高さ10~40cm。枝の直系0.5mm~1mm。葉は膜状で、色は赤褐色。平たく不規則に枝分かれしている。
日本沿岸では冬から春にかけて光が届く浅い海の岩礁に生息する。名前の由来はホンダワラなどの褐藻類に付着するので「藻付く」と名がついたとされる。
海中に生息している時は褐色だが、他の褐藻類と同じく茹でると緑色になる。
一般に食用となるモズクはナガマツモ科とモズク科。市場に出回るものは養殖もので、沖縄県で養殖が盛ん。同県のモズクの生産量は全国の99%以上のシェアを占める。
4月の第3日曜日は「もずくの日」。沖縄県もずく養殖業振興協議会が制定したもので、オキナワモズクの収穫時期に合わせて決められた。
モズクはぬめり成分である粘質多糖類のフコイダンを含むので、ヌルヌルとした食感が特徴。フコイダンには食事の際、糖質吸収をゆっくりとさせる働きがあり、コレステロールと血圧低下作用に役立つとされるほか、美容と健康によい成分とされる。
ぬるぬるとした食感が特徴的。噛むとワカメのような歯ざわり。
酢のものとして食べるのが主流で三杯酢や土佐酢であえた「もずく酢」は加工したものがスーパーで売られている。生のモズク(または塩漬けのモズクを塩抜きしたもの)はお味噌汁や吸い物、雑炊などに入れても美味。沖縄では天ぷらとして食べるのもスタンダード。水気をしっかりと取ったモズクとにんじんや小ねぎを衣と合わせ油で揚げると、ヌメヌメとした食感のモズクがカリッとなり、違う美味しさが味わえる。
荒び海苔
ウシケノリ目 ウシケノリ科 アマノリ属
Pyropia yezoensis
日本各地で養殖
高さ5cm〜20cm、幅2cm〜8cm。
海藻は低温を好むので、早春に姿を消してしまう種類もある。スサビノリもその一種である。
食用となるノリの葉っぱのような体を「葉状体」と呼ぶ。ノリの葉状体は天然のものは晩秋から初春に見られ、12月から3月までが最盛期となる。暖かい時期には見ることができない葉状体だが、それでは暑い夏から秋にかけて、スサビノリはどのようになっているのか?それは、暑さに強い糸状体になることによって夏を乗り切っている。寒くなる秋頃に糸状体から放出され、葉状体が形成される。
糸状体は天然では貝殻などに長い穴を開けて、貝殻の中に潜り込む性質がある。養殖でもこの性質を取り入れて、ノリの糸状体を牡蠣の貝殻に入り込ませ、それを種付けに使用している。
昔はノリ養殖の主流はアサクサノリだったが、繁殖力が強く、生育が早いスサビノリが今では主流になり、全国的に養殖されている。板海苔のほとんどが改良されたスサビノリである。
板ノリはあぶるとパリパリの食感。生ノリはぬるっとしている。
焼きノリ、味つけノリ、生は佃煮としても食べられる。
ノリはお米との相性が抜群。焼きノリはおにぎり、巻き寿司などに使われるほか、焼きもちをくるんだり、せんべいやあられにも使われる。中華そばなどに浮かべても美味。
また、板海苔を細かく帯状に切ったきざみ海苔は、ちらし寿司やそばなどのトッピングに使われる。
初冬から春に入荷する生海苔はみりん、酒、しょうゆなどの調味料で汁気がなくなるまで煮る佃煮もとても美味しい。また水気をよく切って天ぷらにすると磯の香りとサクサクの食感が同時に楽しめる。
馬尾藻、神馬藻、ギンバ
ヒバマタ目ホンダワラ科ホンダワラ属
Sargassum fulvellum(Turner) C.Agardh
本州、四国、九州(三陸海岸と四国、九州南部を除く)
へら形もしくは楕円軽形の葉には鋸歯がある。受精卵を形成し、次の春には1mほどの成体となる。
ホンダワラ類はSargassum(サルガッサム)属にわけられる海藻の総称。
日本周辺の浅場に群生し、古くから食用や肥料となっていた。他には正月の蓬菜飾りや塩作りにも用いられている。
海面に浮きながら漂っている海藻類を「流れ藻」と呼び、そのほとんどがホンダワラ類とされる。葉には楕円形の気泡があり、この浮力によって海中で直立している。これにより、太陽光を効率よく浴びることができ、光合成が行えるようになっている。
春に最盛期を迎え、初夏になると茎や付着器からちぎれ、気胞がついた藻体は海面に浮き、流れ藻になり、その多くは海岸に打ち上げられる。
枝葉が細かく分かれているものが多いので、巻貝類などの葉上動物の住処にもなっている。ホンダワラ類の大きな海藻が茂る場所を「ガラモ場」といい、カジキ類をはじめとする魚たちにとっては餌も豊富で、なおかつ敵から身を隠すことができる便利な場所となっている。
名前の神馬(ジンバ)藻とは、「神の馬の食べる藻」の意味。神功皇后が九州から渡航する際に馬の餌が不足して困ったが、海人族のすすめでホンダワラを餌にしたことに由来する。
食用になる種類は限られているが、食物繊維・マグネシウムの豊富さだけではなく、コレステロール値を下げたり高血圧を予防したり、中でも血栓を溶解する成分が期待されるなど、予防医学の観点からも優れている食品である。
磯の香が楽しめて、海藻らしい旨味がある。
柔らかく食べやすい。
干したものは水洗いしながら戻して使う。甘辛くさっと煮つけると非常に美味しい。味噌汁の具や酢の物にしてもよい。
石川・能登地方では唐辛子みそ和えにすることも。島根県には切干し大根やにんじんと一緒に甘辛い醤油に漬け込んだ「神葉漬け」もある。
マコンブ
コンブ目コンブ科
Saccharina japonica
北海道南部、青森県から宮城県の太平洋沿岸、青森県の日本海沿岸
コンブ類の代表種で日本固有種。長さ1m~3m、幅20cm~30cmの笹の葉の形。水深2m~10mの岩場に生息する。付着根から、短い茎状部が立ち上がり、その上に広い葉状部ができる。ほとんどが2年の寿命で、2年目の大くなった藻体を採集して食用とする。
天然物以外にも2年養殖の「養殖」と呼ばれるものと、1年養殖の「促成」と呼ばれるものがある。また、藻体の切り方、折り方、長さなど仕立て方によっても種類が分かれ、「本揃昆布」、「本場折昆布」、「長切のし昆布」に分けられる。
マコンブはだし用、佃煮用の高級品として使われるほか、神社仏閣でのお飾り用としても使用される。同じくだし用高級コンブにリシリコンブがあるが、こちらは北海道の利尻島、礼文島、稚内沿岸に分布するマコンブの近縁種。形状もマコンブよりも藻体がやや小さく、幅20cm~30cmのマコンブに対し、リシリコンブは10cm~20cmとなる。
上品な甘み。コンブ特有のぬめりがある
マコンブは上品な甘みがあり、澄んだだしがとれることから、主にだし昆布として利用される。
基本のだしのとり方は、水1Lに対して20g~30gのマコンブを用意。マコンブの表面を固く絞ったふきんなどで拭く。(この時、水洗いはしない。水洗いをすると表面の白い粉、マンニットといううま味成分までとれてしまう)1ℓの水にマコンブを30分くらい浸し、中火にかけ、沸騰直前でコンブを取り出せば完成。沸騰してからも煮てしまうと、コンブの粘り成分が溶け出してしまい、だしの風味を損なってしまうので、気をつける。火にかけるのが面倒な場合は、マコンブ20gと1.5Lの水を用意し、マコンブを2~5cm角にカットするか、3mm~5mmの細切りにし、一晩水に漬けてもだしをとることができる。
ガゴメコンブ
コンブ目コンブ科
Saccharina sculpera
北海道南部、青森県・下北半島の北側沿岸、樺太南部
北海道南部、特に函館周辺の限られた海域に生育しているコンブ。ガゴメコンブが発見されたのは、今から約120年ほど前。札幌農学校の宮部金吾博士が調査研究で訪れた北海道渡島半島の恵山海域で、マコンブやミツイシコンブに混ざっている新種のコンブを見つけたことによる。食用コンブのほとんどがマコンブのように、表面が平滑なのに対し、ガゴメコンブは藻体の両面全体に龍紋や雲紋のような凸凹模様がある。そして、何よりも特徴的なのは、他のどのコンブと比較しても、より一層ネバネバ、ヌメヌメしていること。マコンブなどのだし昆布を水に漬けると、表面がヌメヌメしてくるが、これは粘性多糖類の仕業。ガゴメコンブには、このとろみ成分である粘性多糖類が他のコンブよりもたくさん含まれているため、ネバネバしている。特にアルギンサン、フコイダン、ラミナランなどが多く含まれ、生活習慣病の予防や抗アレルギー作用に効果が期待できるとされている。
他のコンブと比較して、よりネバネバでとろみが強い
1枚ものの場合は、1晩水に漬けて、柔らかくなったガゴメコンブを細かく刻んで様々な料理に利用する。
細切りの状態で刻まれているガゴメコンブは完全に浸るくらいの水を入れて、10~20分おくだけで戻るので便利。
水て戻した細切りのガゴメコンブはびっくりするほどのネバネバ感。ネバネバ同士で相性抜群の納豆と混ぜ合わせたり、たらこなどの魚卵と混ぜ合わせても美味。ネバネバの食感を楽しみたいのであれば、コンブのとろみは熱に弱いので、60℃以下で調理をする。ただし、成分は加熱調理をしても問題ないので、スープや吸物などに使ってもよい。
ヒロメ
コンブ目チガイソ科ワカメ属
Undaria undariodes (Yendo) Okamyura
太平洋岸中部(千葉県)〜和歌山県
平面的で広い葉が特徴で中央に1本の葉脈があり、1m前後の大きさになる。ワカメによく似ているが、葉の端にあまり割れ目がなく、楕円形でうちわの形に似ている。また、ワカメのように胞子嚢子葉、いわゆるメカブを形成しないところも異なる。
岩の上に生息し、特に湾入部分に多く見られる。ワカメよりも暖海性で春から初夏に繁茂する。
食用になるが、分布域が日本でも限られているので、ワカメほど知られる存在でもなく、広く流通することも今はない。和歌山県の紀南地方では、春を告げる海藻として知られる。
ヒロメは栄養価も高く、健康にもよい食べ物。血糖値上昇抑制作用、血圧上昇抑制作用、肝機能改善作用、抗がん作用、抗酸化作用に効果があるとされている。
やわらかく、トロミもあるが、シャキシャキとした食感。
味わいはワカメに近く旨味があるが、ワカメと比べると淡白でさっぱりとしている。
おすすめのシンプルな食べ方は、ヒロメの塩茹で。生のヒロメを塩を少量加えたお湯で湯通しし、細かくたたく。好みでかつお節やごまを乗せて食べると美味。
ワカメと同じくみそ汁の具としても美味しい。生のヒロメは水洗いをして、乾燥のヒロメは水で戻してから使う。
徳島では春になるとヒロメとカサゴが採れるので、この2つの煮物もポピュラーな料理。作り方も簡単でヒロメとカサゴをしょうゆ、みりん、酒で煮るのみ。さらにタケノコなども一緒に煮込むとさらに美味しい春の味わいに。他にもサラダ、酢の物、炊き合わせ、鍋物など、淡白な味なので、色々な料理に向く。鍋物では、お湯にヒロメをくぐらせ、ポン酢をつけて食べる「ヒロメのしゃぶしゃぶ」がおすすめ。ヒロメをお湯にくぐらせると一瞬で鮮やかな緑色になり、見た目も楽しめて人気。
海藻についての参考資料
・eヘルスネット(厚生労働省)「ミネラル」
・国立科学博物館「日本の海藻ー美しく多様な海藻の世界ー」
・千葉大学海洋バイオシステム研究センター 銚子実験場「海藻海草標本図鑑」
神奈川県三浦市三崎町城ヶ島658-8
046-881-3202
046-882-4775
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